「強みと同じように、仕事の仕方も人それぞれである。個性である。生まれつきか、育ちかは別として、それらの個性は、仕事につくはるか前に形成されている」(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーによれば、仕事のできるできないは、いくつかの習慣的な姿勢と基本的な方法を身につけているかどうかの問題である。
それらの姿勢と方法とは、時間を管理する、貢献に焦点を合わせる、強みに築く、集中する、的確に意思決定することである。
加えて、所を得ているかどうかの問題である。その所を得るために知らなければならないことが、自らの強みであり、得意とする仕事の仕方であり、自らの価値観である。
仕事は、自分の得意とする仕方でしなければならない。そして、仕事の仕方について最初に知っておくべきことが、自分の得意とする学び方である。
ドラッカーは、子どもの頃から、学び方と教え方に興味を持ってきた。興味が趣味に変わり、研究対象にまでなっていた。そのため、分野にかかわりなく、一流の教師とされる人の授業には、万難を排して潜り込んでいた。大学教授を対象とする研究方法についての調査プロジェクトの主査をやったこともある。
「かつて一流の大学教授について調べた時、かなりの人たちが、学生に教えるのは、自分がする話を自分の耳で聞きたいからだ。そうすることによって、初めて書けるようになる、と答えていた」
ドラッカーは、訳者が本人よりもわかってくれている、と口癖のように言っていた。私が単純に喜んでいたら、ある本の日本版へのはしがきで、最善の学び方の一つが翻訳することだからだ、と簡単に言われてしまった。
ドラッカーは、「自らの学び方がどのようなものであるかは、かなり容易にわかる。得意な学び方はどのようなものかと聞けば、ほとんどの人が答えられる。では実際にそうしているかと聞けば、そうしている人はほとんどいない」と言う。
「自らの学び方についての知識に基づいて行動することこそ、成果をあげる鍵である。あるいは、それらの知識に基づいて行動しないことこそ、失敗を運命づけるものである」(『プロフェッショナルの条件』)