瀕死のシャープが1500億円規模の公募増資を発表。三菱自動車の資金調達も報じられるなど、成長性に疑問符がつく企業が続々と投資に動いている。その裏には何があるのか。
Photo by Satoru Okada
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「どうせ日系がおいしいところを持っていくんでしょう。次(の増資)をにらんで、保険としてお付き合いで入っただけ」──。
シャープが発表した、約1500億円分の公募増資。「V字回復」ののろしを上げるために不可欠な大型案件と位置づけられているにもかかわらず、引き受けのシンジケート団に加わった外資系証券の周辺からはこんな冷めた声が聞こえてくる。
冷ややかなのには、理由がある。シャープの増資が、成長戦略を軌道に乗せるための前向きなものではなく、迫り来る危機を何とか回避するための窮余の策と見切られているからだ。
未認識だった年金債務を負債計上すれば2014年3月期に債務超過に陥る可能性もあっただけに、そう捉えられても不思議ではない。
前向きな投資についても疑問が残る。シャープは、増資で得た資金のうち500億円を、ディスプレイデバイス事業に充てるとしている。しかし、テレビCMなどで盛んにPRを続けている、省電力が売りの液晶パネル「IGZO(イグゾー)」の販売は、計画を下回っている。
この第2四半期こそ300億円の営業黒字を確保したが、通期の業績予想は据え置いたため、「利益を前倒しで計上しているのではないか」という疑惑すら市場でささやかれている。
電機業界に詳しいある証券会社の関係者は「第3四半期以降の業績に、IGZOの不振が反映される前に増資を済ませたい、という意図が見え見え」と指摘する。液晶パネルと比べてまだ成長が見込めるとされる白物家電など他の事業も、15年度に1500億円の営業黒字という同社の目標を実現するほどの力はないという。
「次(の増資)なんてあり得ない」。こう吐き捨てる外資系証券会社幹部もいるほどだ。