今年度中間期の連結決算で300億円程度の営業黒字が見込まれ、足もとでは最大1700億円となる資金調達のメドもつきつつあるシャープ。一時期「シャープ危機」という言葉が流布し、存続が危ぶまれた同社の視界には、晴れ間も出て来たように見える。しかし、忘れてはならないのは「製品力」だ。シャープ危機の大きな原因の1つは、主力の液晶テレビをはじめとする家電事業の不振にあった。真の「製品力」を取り戻し、競争力のある製品をヒットさせていくことこそが、同社の生き残り策において柱の1つとなる。経営再建の緒に就いたシャープの製品力は、足もとでどの程度復活してきたのか。家電製品に的を絞って改めてリサーチしたい。(取材・文/横山渉、協力/プレスラボ)

当面の危機は抜け出せたのか?
晴れ間が見え始めたシャープの視界

「当面の危機は抜け出せるのではないか」

 経営再建中のシャープに対して、こうした見立てが専門家やメディアの中から聞こえるようになった。

 シャープは2013年4~6月期の連結決算で、当初の赤字予想から30億円の営業黒字に。営業黒字はこれで3四半期連続となり、今年度中間期(4~9月期)の連結決算は、従来予想の2倍に当たる約300億円の営業黒字となる見通しだ(今年度通期は800億円の営業黒字予想を据え置き)。業績は回復基調に乗りあつつある。ここ最近の回復要因は、円安による液晶パネルの販売拡大、太陽電池事業の好調などだ。

 稼働率低迷と過剰在庫に苦しめられたモノづくりの現場は、台湾・鴻海グループと合弁化した堺工場、韓サムスン電子と提携した亀山第二工場などで、状況が改善されつつある。足もとの課題は、米アップルのiPhone向け液晶を生産する亀山第一工場の生産安定化、亀山第二工場における中小型液晶「IGZO」へのさらなる生産シフトなどだ。

 一方で、財務の建て直しにも光が見え始めた。かつて50%を誇った自己資本比率は、通期で2年連続の大赤字を計上したことにより、一時6%台まで低下。そこへ、今年9月末には2000億円に上る転換社債、来年に入ってからも合わせて1000億円を超える社債の償還期限が迫る。加えて2014年3月期には、企業年金の積み立て不足額として、約1200億円を負債計上しなければならないなど、苦しい状況が続いている。