「最後にアピールしていいですか」
押し売りはマイナスでしかない

 面接でたまに見かけるのが、こちらが頼んでいないのに「最後にアピールしていいですか」と言い出す人です。応募者の方からそう申し出られれば「どうぞ」とは言いますが、正直面接官は話を聞いてはいません。

 この連載で前回述べたように、もっとも伝えたいことは相手から聞かれるようにしなければいけません。職務経歴書で聞いてほしいところにフラグを立てて質問されるように誘導し、きちんと説明できるようにすることが大切です。

 ところが伝えたいことを自分から話してしまうと、効果は半減します。まして「アピールさせてください」と押し売りをしたら、その価値はゼロどころかマイナスになってしまうでしょう。

 きちんと仕事で実績を積んできた35歳の人なら、面接でアピールできるようなネタをたくさん持っていると思います。しかし、そこには落とし穴があります。自分をアピールしようという気持ちが先走るあまり話が長すぎたり押しが強くなったり、面接官の興味のポイントとはズレてしまったりするのです。

 視点を面接官に移すと、応募者がアピールしたいネタが4つか、5つあったとしても、面接官が全部について聞くとは限りません。ネタを1つだけ聞いて終わりになることはよくありますが、それは必ずしも応募者がダメだったということを意味しません。

 候補者の持ちネタを1つ聞いた時点で「この人はしっかりウチで仕事ができる」という評価になって、それだけでOKを出すケースはよくあるものです。とくに一次面接ではそうで、面接官も忙しいので「この人は採用して大丈夫」という確信を持ったら、それ以上ダラダラと話を聞きません。そもそも同じ日に何人も面接するようなときに、すべての応募者のすべてのネタを聞いていたら集中力がもたないでしょう。