足許の為替市場では、“ドバイショック”が小康状態を保っていることもあり、「ドル安・円急上昇」の動きはやや後退している。
ドル安一服感の背景には、円急上昇の反動や、年末にかけての金融市場の機能低下の懸念がある。年末や年度末が近づくと、通常ドル資金の貸し手が減少する傾向がある。
ドルを貸す人が減ってしまうと、大手金融機関などは自前でドル資金の調達をせざるを得なくなる。そうなると、手持ちの自国通貨を売って、ドルを買う動きが鮮明化する。
その結果、為替市場でドル需要が拡大するため、短期的にはドル買いが優勢になる。当面、ドルの買いが入り易く、円高・ドル安傾向が一服するとの見方が有力だ。
しかし、これでドル安・円高の動きが終わったと見るのは尚早だ。米国経済は、依然バブルの後始末に苦しんでおり、短期間に景気が大きく盛り上ることは考え難い。
景気の本格回復が遅れると、中期的なドルの上昇余地は限られる。一方、新興国の経済発展のスピードは加速しており、新興国の通貨はいずれも、対ドルで強含みの傾向を示している。それに引っ張られる格好で、資源国通貨も強含んでいる。こうしたトレンドは、すぐに変化することはないだろう。
また、米国の政策当局は、国内経済を回復させるために、ある程度のドル安を容認して輸出を拡大することを意図している。それは、政府高官の発言などから読み取れる。
現在、ヘッジファンドや米国の大手機関投資家の多くは、金利水準の低いドル資金を調達して、その資金をブラジル・レアルなどの高金利通貨で運用している。いわゆる“ドルキャリートレード”だ。それによって、金利差や為替差益を享受している。
彼らにとって、ドルが下落する方が、より高い収益を上げるチャンスが増える。そのため、ドル安傾向は好都合だ。
そうした要素を考えると、中期的なトレンドとして、ドル安・円高傾向に大きな変化はないだろう。年明け以降、円高が一段と進む可能性は高いと見るべきだ。