「最近よく食べます。安くておいしいし、ごはんと違っておかずを用意しなくてすみますから。子供の夏休みにはもっと買うことになりそう」

 JR中央線沿線にある大手スーパーで、40代の女性が買い物カゴに「マルちゃん 焼きそば(3人前)」を2袋入れていた。カゴにはもやし2袋も入っている。

 同スーパーの店員によると、ゴールデンウィーク前から、もやしやキャベツと一緒に焼きそば用のチルド麺を購入する客が急増しているという。

 焼きそばの中でも一番人気となっている東洋水産の「マルちゃん 焼きそば」は、3食入りソース付きで希望小売価格は1袋当たり275円。スーパーによっては、230円程度まで値下げしているケースもある。「1食当たり100円を切る」という安さは、何より魅力的だ。

 焼きそばをはじめとするチルド麺の人気はすさまじく、東洋水産は「2010年3月期の生めん事業の売上高が前期比2.0%増の507億円と過去最高を更新する」と予測しているほどだ。大手スーパーは、この夏、軒並みチルド麺の売り場面積を拡大して、需要に対応している状況なのだ。

不況に悩む各社に転機到来?
焼きそばや即席麺が大人気

 絶好調なのは、チルド麺だけでなく即席麺も同様だ。食品メーカー各社は驚きを隠さない。

 「売り上げが伸びているのが一般のナショナル・ブランド(NB)より3~5割ほども安い『ベストプライスバイ・トップバリュ』の商品。なかでもカップ麺(68円のしょうゆ・みそラーメン)が好評で、よく売れています」(イオン・コーポレート・コミュニケーション部)

 「『カップヌードル』の売れ行きが好調で、4月と5月は前年を上回る勢いで伸びています」(日清食品広報部)。

 こうした傾向は、データにも如実に現れている。総務省「家計調査」の今年1~5月までの家庭の購入量を見ると、即席麺は前年同期比14%増、カップ麺は同じく10%増と売上高が大幅にアップしている。

 いったい何故これほどまでに麺類が売れているのか?

 その理由について、第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣氏は、こう分析する。

 「昨年は穀物の高騰で価格がアップした麺類を控え、コメの消費量が非常に伸びた。今年はその反動や、不況による内食傾向が続いていることから、価格の安い麺類が売れているのではないか」