オペレーショナルな
ファイナンスが重要

常にそこにいるヴィジブルなCFOが理想 <br />現場を理解した判断ができてこそ存在価値がある<br />――梅田千史・MSD取締役執行役員財務部門統括ながい・まりこ
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 トーマル グループCFOプログラム、マネジャー
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永井 私もGEのCASの話は聞きますが、非常にハードだというのがみなさん共通しています。その後、GEでいくつかのファイナンスのポジションを経た後、MSDの前身でもあったシェリング・プラウの財務部門に転職されましたが、GEと共通するところと、あるいは大きく違ったところがありましたか。

梅田 一緒だと感じた部分は、根幹にある部分ですね。財務のインテグリティ、すなわちしっかりとした内部統制と財務レポーティングこそが土台で、これは妥協できないものだという認識です。一方で、ファイナンス部門がビジネスの成長をドライブし、サポートし、バックアップできなくてはならない。

 それから実際のビジネスのことを理解した上で、戦略的なアドバイスをしたりサポートしたり、ビジネスプロセスの最適化をしたりするオペレーショナルなファイナンスを大事にするということも同じでした。

 逆にテクニカルなファイナンスは、グローバルでの為替ヘッジや各国の法令制度に則った税務申告、M&Aの際ののれんの処理といった複雑な会計処理のようなものですね。これも非常に重要ですし、私がまだまだ経験を積まなければならない分野です。両社で共通して求められているのは、テクニカルなファイナンスでビジネスをリスクから守る事をベースとし、そのうえでオペレーショナルなファイナンスでビジネスの成長をドライブしていくことだと思います。

永井 テクニカルなファイナンスにもオペレーショナルなファイナンスにも、専門的な知識やビジネスへの理解、そして各部門の方との調整といったヒューマンスキルなどが求められます。しかし、オペレーショナルなファイナンスには、さらに言うならば、ビジネスをリードしていく「攻め」の姿勢が求められるのだと思います。逆に、GEとは違った部分はどのような点でしたか?

梅田 GEはとにかく多業種でさまざまなビジネスモデルがありますが、MSDは製薬業ということに特化していますから、ある意味、ビジネスモデルや他のさまざまな会計処理方法等はGEほど複雑ではありません。一方で、製薬業は製品のライフサイクルのなかで長期にわたり様々な投資が必要になり、その都度グローバル本社のビジョン・戦略を踏まえた上で、ローカルのニーズに合わせた判断を行っていくことが非常に重要であり、より包括的にファイナンスとオペレーションの関わりを捉えていく必要があります。

 MSDには人々の命を救い生活を改善する新薬・ワクチンを社会にお届けするというミッションがあるので、その戦略に則ってあらゆる判断が行なわれます。先々を見据えて社内でディスカッションをして投資の判断をしたり、時には経営資源の最適化をするために他社と協力してより広く患者さんに薬を届けるような仕組みを考えたりします。

 そのときに、ファイナンスは患者さんの利益を損なわず、会社の成長を支えるには何が必要なのかということを考えていきます。私たちファイナンスとしては、その意思決定の際の、必要な情報を提供し、全社的な視点から意見するという、重要な役割があります。