津谷正明CEO(写真右)は「“王者”だからといって傲慢になったり、甘くなったりすることが一番怖い」と身を引き締める
Photo by Rika Yanagisawa

 世界のタイヤ市場でシェア首位のブリヂストンが、“絶対王者”の座奪取に向け、抜かりがない。

「業界においてすべてに断トツを目指す」とかねて宣言してきた津谷正明CEO。世界シェアでは仏ミシュランを抜きトップになって久しいものの、利益率では後塵を拝していた。だが2013年1~6月の業績では、ミシュランの営業利益率11.3%に対してブリヂストンは同11.2%と接近。13年12月期の営業利益は4000億円の過去最高益を見込んでおり、“ミシュラン超え”が射程圏内に入った。

 10月17日に発表した5カ年中期経営計画では、ROA(総資産利益率)6%、営業利益率10%を継続確保する目標を打ち出したが、注目は数値そのものよりも内容だ。

 その一つが、組織再編における欧州事業のてこ入れ。長引く景気低迷で営業利益率数パーセントの低空飛行を続けており、ブリヂストンにとって悩みの種になっている。手始めに欧州統括会社のトップを、同社初となる欧州出身者にすげ替え、イタリア工場の閉鎖を決めた。「イタリア工場は組合が多く、話し合いのテーブルに着いてもらうのさえ難しかった」(津谷CEO)が、日本人ではできなかった交渉が現地に権限委譲して指揮を執らせたことで進んだ。

 今後は中近東、アフリカ、トルコ、ロシアの事業組織を欧州組織に統合し、「拡大欧州ユニット」として機能させる。中近東やアフリカ向けタイヤは欧州で生産し輸出すると、関税優遇などのメリットがあるからだ。

中韓追い上げで地殻変動

 もう一つが、ブランドの再定義だ。販売地域と商品群が共に拡大し続ける一方で、「ブランド戦略が全体の整合性を欠くようになった」と津谷CEOは指摘。グローバルで見れば最も販売数の多いブリヂストン・ブランドが高級~中級、25%程度を占めるファイアストン・ブランドが中級、デイトン・ブランドがローエンドな廉価品と位置づけているが、現実には各ブランド内にもプレミアム品から汎用品まであり、地域によっては各ブランドの販売割合や定義づけがさまざまに異なっている。