小泉純一郎元首相は、11月12日に日本記者クラブで会見し、安倍晋三首相に「原発即時ゼロ」の方針を打ち出すよう強く迫った。
彼の記者会見は退任後初めてのこと。誰よりも彼自身が、もう記者会見は永久にしなくてよいと思っていただろう。
ところが、講演内容が大きく報道されるようになると、各メディアから取材依頼や出演依頼が殺到。ものぐさな彼は、いちいちそれに応じるのは面倒だし、公正、公平を欠くことになりかねないと思う。それなら1回だけ公平で公正な取材ができる機会をつくる他はない。それで今回の記者会見に至ったのだろう。私のこの推察は的はずれではあるまい。
「即時ゼロ」「安倍首相への訴求」
記者会見で見せた新たな2つの展開
さて、今回の記者会見での話の内容は、当然のことながら、報道されてきたこれまでの講演内容と同じである。
違いをあえて指摘すると、原発ゼロの時期を「即時ゼロ」と明言したことと、標的をさらに明確に安倍晋三首相に絞ったことの2つが挙げられる。
「即ゼロ」の意向は記者の質問に答えたもの。だが返答は即座で断定的であった。
その理由は、「再稼働をするにしても、そんなに多くは再稼働できない」し、「核のごみも増えていく」し、「どうせ将来やめるんだったら今やめた方がいい」ということ。要するにいかなる再稼働にも反対ということだ。
「原発ゼロ」をめざして、原発依存を減らしていく方針だと、当面は安全性の高い原発の再稼働を容認することになるが、彼はその可能性さえきっぱり否定。従来よりもう一歩踏み込んだのだ。