「フェーズ6に引き上げることに向けて議論に入った」
5月5日のWHO(世界保健機関)の発表は、警戒態勢の継続を求めるものではあるにせよ、世界を震撼させはしなかった。パンデミック発生を意味する「フェーズ6」の判断基準は、あくまで流行の地理的な拡大であり、病状の重さや死亡者数ではないからだ。
今回の新型インフルエンザは感染者こそ世界的に広がっているが、死者は5月7日時点で44人にすぎない。強毒性の鳥インフルエンザによるパンデミックでは、「死者が急激に拡大する」と想定されていた。
とはいえ、激動の2週間だった。緊張が走ったのは4月24日。メキシコ市、メキシコ州で豚インフルエンザの発症者が次々に確認され、学校が休校となった。米疾病対策センターは「ヒトからヒトへの感染」と断定。WHOは緊急委員会を開催し、27日にパンデミックへの警戒度を「3」から「4」へ、29日には「5」へと引き上げている。
しかし、メキシコ以外での死者は米国の2例のみ。米疾病対策センターの専門家は「A(H1N1)ウイルスの遺伝子には、スペイン風邪や鳥インフルエンザのウイルスにある、強病原性の遺伝子が存在していない」と発表している。症状は季節性インフルエンザと大差なく、今後、重症例や死者が現れても、季節性インフルエンザと同程度という見方を示した。
秋以降に第2波が襲う!?
不気味な「3つの理由」
インターリスク総研 主席コンサルタント本田茂樹氏 |
「今回はマイルドな流行で終息しそうですが、油断は禁物。たかをくくっていると、足をすくわれる」
こう指摘するのは、インターリスク総研 主席コンサルタント本田茂樹氏だ。たしかに、4000万人(一説には5000万~1億人とも言われる)の死者を出したスペイン風邪のような大惨事は当面起こりそうもない。だが、今年秋以降はわからない。理由は次の3つだ。