地域大国の地位確立を狙うイラン
核開発の意図と経済制裁緩和の目論み
11月初旬、ジュネーブで行われていた核問題についてのイランと安保理常任理事国5ヵ国プラスドイツの交渉は、合意できずに終わった。また交渉が再開されると伝えられるが、交渉課題はイラン内でのウラン濃縮の進行を当面止める第一段階の合意をつくることであり、仮に合意ができても問題は続く。
イランの核問題は、1つ間違えば中東を再び戦火にさらしてしまう極めて深刻な問題である。この問題の背景には複雑な各国の思惑が錯綜し、現在世界が抱えるいくつもの課題も見えてくる。
まず、当事国であるイランであるが、多くの専門家は、イランはイスラエルに対する対抗力を持ち、地域の大国としての地位を確立するために、核兵器を保有する意図を有すると考えている。また、国際社会の努力にかかわらず、この意図を完全に放棄させることはできないのではないか、との見方も強い。
イランは核不拡散条約のメンバーであり、核技術の平和利用の権利を主張し、ウラン濃縮技術を確立しつつある。しかし、いったん武器化に必要な程度のウラン濃縮が行われてしまえば、もはやイランの核兵器国化は止められない(したがってイスラエルは、空からの攻撃により核関連施設を取り除くことが、少なくとも当面はイランの意図を実現させない唯一の方法と考えているのであろう)。
こうして関係国、特に米国の経済制裁を受け、国内物価の高騰に国民の不満が高まり、穏健派の大統領が選出されたイランでは、現在核開発の意図を持ったまま経済制裁の緩和を実現することが、政権に課せられた最大の課題となっている。