ミャンマーの業界を見るに際して、必ず外せない分野。それが農業である。

 現在、ミャンマーGDPの約4割を占め、かつ就業人口の約6割が農業に従事している。また、日本にとっては、戦後の食糧難の際にミャンマーからのお米に助けられたという過去もある。

 一方で、このように主要な産業であるにもかかわらず、インフラ面の欠如等、まだまだ改善の余地が大きいのもミャンマー農業の一つの特徴だ。またそのような状況を変えるべく、今までも日本の経験とノウハウを注ぎ込もうとする努力がなされてきたし、現在も続けられている。

 ミャンマーにおける農業分野の占める割合の高さから、今後のミャンマーの経済力の底上げを図る際には、農業関連分野での実力を高めていくことは不可欠で、現地政府もそれを深く認識した上で、農業事業の高効率化に取り組んでいる。またそこには、日本に対する期待感も大きい。

 今回は、このミャンマーの農業環境を理解するための、基礎的な情報について整理したい。

大きく3つのゾーンに
分けられるミャンマー農業

 ミャンマーの農業環境を理解するうえで、まずは現地の気候について簡単に見ていきたい。

 ミャンマーは、他の東南アジアの近隣国と同様に、熱帯モンスーン型の気候で、1年間に大きく雨期と乾期が存在する。雨期は、5月中旬から10月の中旬頃までで、南西からの湿ったモンスーンにより降雨量が増える。この時期には、曇天が続き、時折バケツをひっくり返したような熱帯特有の激しい雨が降る。

 雨期の後には、10月の下旬ごろから乾期に入り、2月ごろまでは大陸からの乾燥した北東モンスーンにより、比較的乾燥した過ごしやすい時期になる。この時期は、山岳地帯では氷点下近くにまで気温が下がり、北部の山には降雪がみられる。

 その後、3月から5月にかけてはミャンマーで最も暑い時期に入り、暑季と呼ばれたりする。この季節には、ヤンゴンでも35度以上の暑さになる。