百年に一度ともいわれる不況。昨年度の企業の倒産は、16000件を越える。企業の資金繰りは、急速に、そして、かつてないほど悪化している。

 そうした中、銀行に対する「貸し渋り」への批判は根強い。国は、銀行に対し、企業への融資拡大を最優先にするよう再三にわたって求めている。銀行は、資金繰りに行き詰まる企業への融資をどうするのか。

企業への融資は
どう決まるのか?

資金繰りにあえぐ中小企業が急増!<br />「貸すか、貸さないか」地方銀行 苦渋の選択
武蔵野銀行の中枢である「本店融資部」。担当者は11名。各支店から続々と集まってくる融資依頼をめぐり、連日厳しい審査が行なわれている。

 今年1月、取材班が訪れたのは、埼玉県の武蔵野銀行。融資先の9割を地元の中小企業が占める地方銀行だ。2ヵ月におよぶ交渉の結果、銀行の中枢、本店融資部にカメラを入れることが許された。去年の秋以降、運転資金に困った企業からの依頼が急増している。

 この日、持ち込まれたのは大手自動車メーカーの下請けをしている企業からの依頼。社員の給与などの資金、2000万円が必要だという。自動車メーカーの減産で、売上げはこの半年で半分にまで落ち込んでいる。工場や自宅は、別の融資の担保としてすでに押さえられている。融資はしたいが、返済を裏付ける材料が必要だった。そこで、担当する支店に連絡し、至急調査するよう求めた。

 調査の結果、雇用を守るためにワークシェアリングを行なっていることに対し、月に138万円の助成金が国から支給される予定であることがわかった。さらに、半年後には自動車のモデルチェンジで、受注が大幅に増える見込みだという。融資部長は、受注が増える見込みに頼りすぎないことを条件に、2000万円の融資を決めた。部長はこう語った。

 「悪くなったときに、しっかりと資金の供給をしていくのも、地元金融機関の使命。リスクテイクをしながら、お客様を育成というと語弊があるけども、支援していくということ」

 この日、川口支店の別の担当者が、ある融資先の社長に電話をかけていた。しかし、電話はつながらなかった。返済が滞るようになって4ヵ月。突然、連絡が取れなくなったのだ。融資額はおよそ3000万円。支店長自らが対応に向かったが、社長の行方はわからなかった。

 返済が滞ったのは、他の金融機関が突然融資を引き上げたためだったという。武蔵野銀行が融資したおよそ3000万円は、回収の見込みが立たなくなった。

メインバンクが突然の融資撤回!?
支え切れない、他の取引銀行たち

 他の銀行の動向次第で、融資はさらに難しくなる。この日、本店融資部にある支店から連絡が入った。県内の部品メーカーへの追加融資についてである。他県の銀行が、共同で融資しないかと持ちかけてきたというのだ。

 この会社は数億円の借金を抱え、資金繰りに行き詰まっていた。武蔵野銀行はすでに3500万円を融資していたが、その返済を半年猶予することを決めていた。そうした中、さらなる追加融資の話が来たのである。