12月上旬の平日夜に東京都内のデパート内を歩いていて、どきりとした。あるフロアに顧客が誰もいないのだ。別のフロアを見ても、一階以外は、店員の数が客の数を上回っている。当日が悪天候だったせいがあるとしても、12月にこの状態はひどい。この日のこの時が特殊だったのかもしれないが、「不景気」が駆け足でやってきたことを実感した。

 数字を見ても不景気だ。全国の百貨店売上高(10月)は対前年比マイナス6.8%だし、消費支出(2人以上の世帯:10月)もマイナス3.8%、11月の新車販売台数に至っては対前年比マイナス18.2%の落ち込みだ。現金給与総額(全産業)も10月から対前年比マイナスになった。

 失業率だけ3.7%とまだ低いが、求職を一時的に諦めている人の影響があろうし、有効求人倍率(10月は0.80倍)の落ち込みから見ても、上昇に転じることは、ほぼ確実だろう。

 製造業大手は相次いで派遣や契約社員などの非正社員の削減を始めているし、中堅クラスの企業では、学生の採用内定を取り消すところが出てきた。正社員も安泰とはいえず、希望退職者を募る企業が出ている。

 かつてであれば、経営者は、株主と従業員のあいだのバランスを取りつつ、従業員をもう少し大事にすることができた。だが近年、株主利益の最大化が強く意識されるようになって、人員の整理に手をつけるスピードが速まっているように見える。世知辛くなった。

 世界の金融危機は、日本のバブル崩壊後をビデオの早回しで見るような様相を呈しているが、かつての日本でいうと現状は山一が自主廃業を発表した1997年の翌年で、大手銀行に横並びで公的資金を入れたが長銀が破綻した98年くらいの段階だろう。98年度は実質GDP成長率でマイナス1.5%を記録した、バブル崩壊以来最悪の年だった。いずれにせよ、2009年に向けて、景気の一段の悪化は避けられそうにない。