金融庁が今月2日に示した1枚のペーパーが、金融機関を震え上がらせている。

 政策会議の席上で示されたのは、金融検査マニュアルの改定案。亀井静香金融担当相がぶち上げたモラトリアム法こと、「中小企業金融円滑化法」が施行されたのを受け、金融庁がまとめたものだ。

 その最後の部分に、ひっそりと盛り込まれていた文言が衝撃的だった。

「経営改善計画等の策定が可能であると見込まれる場合であれば、計画等の策定を最長1年猶予し、その間は貸出条件緩和債権に該当しないこととする」

 つまり、融資先から「そのうち計画をつくるつもりだから」と言われれば、一年間は不良債権と見なしてはいけないというのだ。

 金融機関にとって経営改善計画は、条件変更などにおける重要な判断材料で、本来、それなしでは融資の継続さえままならない。それを「待て」と言うのだから、「どんな会社でも救えというのか」と銀行幹部らは憤る。

 これまで、貸し出し条件を変更した条件緩和債権は、不良債権に区分されていた。それを昨年、「中小企業への円滑な資金供給」の名の下に金融庁は方針を転換、一部を不良債権としないことにした。

 円滑化法でその範囲を拡大する方針が掲げられ、計画の策定猶予はその一例として示されたもの。とはいえ、「異議を申し立てても聞き入れられるわけがない」(銀行幹部)だけに、検査をクリアするためには応じざるをえない。

 さらに金融機関の不安は募る。

「普通の企業は信用不安につながるから申請しないだろう。だとすれば、本当に危ない企業ばかりの可能性が高い」(同)

 モラトリアム法が骨抜きにされ安堵していただけに、金融機関が受けたショックは大きい。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)

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