「コロボックルの世界に生きていたい(笑)」

ちきりん『ゼロ』で述べられている堀江さんの主張は、私の考えと似ているところが大半なのですが、ひとつだけ「全然違うなあー」と思う箇所がありました。

堀江 どこですか?

ちきりん ひとりになりたいと思ったことがない、というところです。

堀江 ああ。

ちきりん ひとりで“ボーッ”としてる時間って、楽しくないです?

堀江 ひとり……。うーん。

ちきりん ひとりだと楽しいと思えないんですね?

堀江 ひとりって、すごい嫌なんですよ。

ちきりん『ゼロ』でも、自分は寂しがり屋だって書いてありましたよね。私の場合、ひとりで寂しいとかって、全然ないんですよ。

堀江 ああ、そうなんですか。

ちきりん 会社を辞めてから「なるべく働かない生活」を目指してて、取材や講演依頼の9割は断ってしまいます。そしてひとり、引きこもってるわけです(笑)。でも、寂しいと思うことはありませんね。

堀江 外には出ないんですか?

ちきりん 家でブログを書いて、ゲームをして、本を読んで、一人でご飯作って食べて…。旅行は好きだけど、それもビーチで寝転んでたり、温泉でまったりしてたり、引きこもり系の旅行ばかりですね。本のプロモーションの時期以外は外にも出てない、みたいな感じで(笑)。

堀江 ええー、もったいない。もっと働けるのに。

ちきりん 前はバリバリ働いてました。それこそ朝から晩まで仕事にハマって。私はビジネスも好きだし、お金を儲けるのも楽しい。仕事はおもしろかったです。でも、それ以外にも送ってみたい人生があったんです。

堀江 単純に、仕事と遊びを区別しなければいいんじゃないですか?

ちきりん うーん、それって「仕事以上に楽しいものはない」って人のセリフですよね。じつは私、大学のときにちょっとだけ、すごくくだらない事業を友達とやっていた時期があって。客の入っていない飲み屋で、合コンをアレンジしていたんです。

堀江 へえー、それは「街コン」みたいなものですか?

ちきりん そんな大掛かりなものじゃないです。私の通っていた大学が男の子ばっかりだったので、近所の女子大の女の子に声をかけて、合コンをセッティングして、男の子とお店から少しずつマージンをもらって(笑)。

堀江 すごいなあ。けっこう儲かったんじゃないですか?

ちきりん 1回につき1万円くらいですね。計画段階では、1日5組セッティングできれば、毎日5万円も儲かる!って、皮算用してました(笑)。

堀江 わかります(笑)。

ちきりん でも当時は、パソコンも携帯電話もなかったんで、そういったことを始めると、ずっと家の電話の前に張りついてないといけなかったんですよ。バックパックで海外旅行するのが大好きだったのに、「1万円の電話」のせいで、全然行けなくなっちゃって。それで、嫌になってやめちゃいました。

堀江 今だったら、システム組んで終了ですよ。

ちきりん ほんとですよね。でもそのときにわかったのは、私って、働く時間が決まっていて、それ以外の時間は個人の時間という、メリハリのついた働き方じゃないとダメなんだな、ということです。だから会社員が合ってると思って、就職しました。

堀江 へえー、意外ですね。

ちきりん でも実際に働き始めたら、会社員なのに休みも取れない。朝から晩まで働かなくちゃいけなくて、うわあ、話が全然違うじゃん、って(笑)。

堀江 ありがちです(笑)。