今回の堀江さんの対談ゲストは社会派ブロガー・ちきりんさん。ツイッター上では交流のある二人ですが、実際に会って話すのは初めてだとか。ちきりんさんが2005年に始めた「Chikirinの日記」は、いまや月間ページビュー200万を誇る日本有数のブログです。多くの人に自分の考えを伝えるためには何が必要なのか──『ゼロ』を執筆するにあたってそのことを徹底的に考え抜いた堀江さん。ちきりんさんと「伝え方」に関する話で大いに盛り上がりました。(写真:平岩紗希)

デビュー作は
堀江さんのおかげで売れました!

堀江貴文(以下、堀江) どうも、はじめまして。こうしてお会いするのは初めてですが、ツイッター上では、何度かやりとりしてますよね。

ちきりん そうですね、その節は大変お世話になりました。私ずっと、堀江さんに会ってお礼が言いたかったんです。

第3回<br />[ちきりん×堀江貴文 対談](前編)<br />伝わらない悔しさを乗り越えてちきりん
関西出身。バブル最盛期に証券会社で働く。その後、米国留学を経て外資系企業に勤務。2010年末に早期リタイヤ後は、「働かない生活」を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50ヵ国を旅している。2005年から書き始めた「Chikirinの日記」は、政治・経済からメディア、世代論まで、幅広いテーマを独自の切り口で語り、現在、日本で最も多くの支持を得るブログとなっている。著書に『ゆるく考えよう』『自分のアタマで考えよう』『未来の働き方を考えよう』など。

堀江 えっ、そうなんですか?

ちきりん はい。初めて本を出したとき、『ゆるく考えよう』(イースト・プレス/2011年)の帯に、堀江さんから「オヤジの書いた説教本を読むより、この本を読む方が100倍役に立つ」っていうコメントをいただいて。無名な私の本が売れたのは、あの推薦文のおかげです。

堀江 そうでしたっけ。ああ、そういえば何か書いたような……(笑)。でも、ちきりんさんの本、どれも面白いですよね。僕が推薦しなくても、全然売れましたよ。

ちきりん いえいえ、あの頃は書店ではまったく知られてなかったから本当にありがたかったです。

堀江 最新刊『未来の働き方を考えよう』(文藝春秋/2013年)の中に出てくる「ストック型」と「フロー型」の生き方なんかも、すごくいい表現で、何度か僕の講演会でも使わせてもらっています。

ちきりん そうなんだ。それは嬉しいです。私も『ゼロ』を読ませていただいて、もちろんとても面白かったんですが、なによりもめちゃくちゃ驚きました。

堀江 えっ、なぜですか?

ちきりん 自分のメッセージを伝えるために、堀江さん、ここまで歩み寄るんだ。すごいなって。

堀江 ああ。

ちきりん 今までの本とは、書き方がまったく違いますよね?

堀江 そうですね。じつは僕、すごく悔しかったんですよ……。これまでに、10年間で50冊くらい本を書いてきたんです。でも全然伝えたいことが伝えたい人に伝わっていなくて。

ちきりん 50冊も出されてたんですね。

堀江 べつに印税が目的でも、自己顕示欲が強いからでもありませんよ。僕はもともと、引きこもり、オタク、童貞、中二病みたいなところからスタートしていて、どうやって自分がそういったマインドを克服していったのか、見えない殻を破っていったのか、というのを、鬱屈としていた昔の自分のような人たちに伝えたかっただけなんです。

ちきりん 何もない「ゼロ」の時代の堀江さんみたいな人たちですね。

堀江 なのに、伝えたかった人たちからは、「なんだよあいつ。しょせんリア充じゃねえかよ、金持ちじゃねえかよ」って言われていて……(苦笑)。