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スマートフォンの理想と現実

ソニーXperia Z躍進からウィルコム消滅まで
スマートフォンをめぐる2013年の出来事を振り返る

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第57回】 2013年12月26日
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6月:らくらくスマホのフランス投入

【概要】
 富士通は、国内でドコモに提供しているシニア向け端末「らくらくスマートフォン」をフランステレコムの通信サービス「Orange」向けに供給を発表。富士通は2月のMWC2013にて「らくらくスマートフォン」を展示し海外の事業者からも注目を集めていた。

富士通:フランス版 "らくらくスマートフォン"「STYLISTIC S01」、販売網拡大 - ワイヤレスワイヤーニュース

富士通、海外版らくらくスマートフォンを大々的展示、ジェスチャーキーボードも注目 - ワイヤレスワイヤーニュース

【解説】
 MWC2013で華々しくリリースされた「らくらくスマートフォン」の海外投入だが、その後の消息は耳にしない。OECDの作業部会で日本政府代表団員を務めており、年に何度かパリに滞在する機会があるのだが、らくらくスマートフォンを街中で見かけたことは、正直一度もない。

 らくらくスマートフォン自体は、悪い端末ではない。ただ、たとえば年老いた私の両親にも使えるスマートフォンは何か、と自問した時に、最初に思い浮かぶ端末ではない。むしろ、字が大きく画面も見やすく、何より周囲に使っている人が多い――そういう要件を意識するほど、iPhoneが候補となる。そして、「iPhoneを両親が導入することで生じる私の便益と手間」との天秤で、結局スマートフォン導入を見送らせる。そういう逡巡が、おそらく一般的ではないだろうか。

 日本企業の海外進出は私が本当に応援したいことの一つだし、そういうお手伝いもしてきているつもりだ。ただ、単に持ち出してみればいいわけではないというのは、この連載でも一貫してお伝えしてきた。最終消費者に最終商品をデリバリーするということが、市場での実績や製品開発能力を失った日本企業にとって、現時点で本当に妥当なアプローチなのか。誰に何をどう届けるか、そんな原点に立ち戻った冷静な分析が必要だ。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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