「言った言わない」でトラブルが起きる本当の理由
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。
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人の「思い込み」は怖い、というお話
今日は、「思い込み」がいかに怖いかというお話をしたいと思います。
なぜ急にそんな話をしようと思ったかというと、実は先日、私自身に衝撃的な出来事があったからです。
パートナーとのLINEでの行き違い
まず前提として、私とパートナーの働き方の違いについてお話しします。パートナーはいわゆるカレンダー通りの勤務形態です。一方、現在の私は週1回、友人のクリニックで診察をする以外は、執筆や収録、配信など自宅での仕事が中心です。
そのため、基本的には週末に一緒に過ごすことが多いのですが、パートナーは祝日がある週でも、あえて出勤して仕事を片付け、その分の振替休日を別の日に当てて旅行に行く、といったスタイルをとっています。ですから、祝日でも基本的には仕事へ行くことが多いのです。
そんな中、次の祝日について、予定を立てようと思い、LINEで「この日、休み?」とパートナーに尋ねました。すると彼からは「仕事だよ」と返信がありました。
私はこれを読んで、てっきり「休みだよ」と書いてあると思い込んでしまったのです。「普段は仕事だけど、今回は休みなんだ! ラッキー!」と喜び、勝手に自分の予定を調整していました。
自分の都合の良いように記憶を書き換えてしまう
後日、その話題になったときのことです。「今度の祝日、久しぶりにお休みだね」と私が言うと、パートナーはキョトンとして「いや、普通に仕事だよ?」と言うではありませんか。
私は耳を疑いました。「いやいや、LINEでしっかり『休みだよ』って送ってくれたじゃん!」と言い張りました。しかし、彼は否定します。そこでお互いにLINEの履歴を確認してみることになりました。
検索して画面を見てみると……そこにはしっかりと、「仕事だよ」と書かれていたのです。私は思い込みが激しいほうだという自覚はありましたが、これには驚愕しました。「絶対に間違いない」と鮮明に記憶していたはずなのに、完全に思い込みだったのです。
ここから痛感したのは、「人間は自分の知りたいように情報を書き換え、聞きたい情報しか頭に入れない」ということです。
今回はLINEという「証拠」があったから良かったものの、もし口頭だけのやり取りだったら、「言った、言わない」の喧嘩になっていたかもしれません。
ネット社会における情報の偏りと、伝える難しさ
この話は、個人のやり取りだけでなく、世の中全体にも当てはまることだと思います。特にネット時代である現代は、情報があふれかえっています。「Aは正しい」という情報もあれば、「Aは正しくない」という情報も無数に存在します。
本来であれば、一次情報(大元のデータ)や論文を調べて真偽を確認する必要があります。しかし、ブログやSNSでは、不確かな情報でも堂々と、もっともらしく語られています。そうなると、私たちは無意識のうちに「自分が信じたい情報」「自分にとって都合の良い情報」ばかりを集めてしまい、思い込みを強化させてしまうのです。
今回の私のように、文字という証拠を見てすら勘違いをするのですから、不確かな情報の中ではなおさらでしょう。
重要なことは「丁寧に、何度でも」伝える
この経験を通じて得た教訓は、「何が真実かは、聞きたい情報しか聞かない人間のフィルターを通すとわからなくなる」ということです。だからこそ、誰かに大事な情報を伝えるときは、「相手はこちらの意図通りに受け取っていないかもしれない」という前提に立つべきです。
一度さらっと言ったくらいでは伝わりません。相手は聞き逃しているか、あるいは私のように真逆に解釈している可能性すらあります。
●誰にでもわかるように、丁寧に説明する
これくらいやって初めて伝わる、という認識でちょうど良いのだと思います。そして同時に、自分自身もまた「見たいものしか見ていない」可能性があることを自覚し、情報の根本をしっかり確認する癖をつける必要があると、強く反省しました。
人の思い込みの力は、本当に侮れません。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。








