山口県の山奥にあるつぶれかけた小さな酒蔵が、いかにして世界約20ヵ国に展開するまでに至ったのかーー? 伝統産業にあって型破りな経営改革を断行する間の七転び八起きを支えた、合理的思考法と熱いスピリットをまとめた『逆境経営 〜山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』(1/17刊行)から、一部をご紹介していきます。著者である桜井博志・旭酒造社長は、1/16(木)のテレビ東京系列『カンブリア宮殿』に出演予定です!

 突然ですが、このお酒の名前をご存じでしょうか。

 <獺祭>

 最近では、意外にも多くの方が答えてくださいます。
「“だっさい”ですよね」

 私が社長を務める旭酒造は、山口県の山奥にある酒蔵です。今では、旭酒造という社名よりも、<獺祭(だっさい)>という銘柄のほうが知られている、小さな会社です。

 この「獺祭」という酒は、テレビCMも流していませんし、量販店やコンビニエンスストアといった一般になじみの深い酒販業態ともほとんどお付き合いがありません。ただ、東京の料理屋さんや飲み屋さんあたりで飲まれたことのある方が増えて、難しい漢字の商品名ですが(私どもの酒蔵の所在地である、獺越(おそごえ)の地名にヒントを得ました)、期待する以上に皆さん「だっさい」と読んでくださいます。

 実は2013年、「獺祭」の出荷数量は1万1400石と、純米大吟醸という酒別で全国トップとなり、お陰様で今も伸びています。

 私たちがお出ししているお酒の銘柄はただひとつ、この<獺祭>しかありません。この「たったひとつ」を「最高のひとつ」に磨き上げることで、少しずつ、着実に、そして気づけば多くの方に、山奥から<獺祭>をお届けできるようになりました。

 2000年からは海外展開を始め、すでに約20ヵ国で販売しています。そして、2014年夏、フランス・パリの凱旋門近くの一等地に、<獺祭>を飲んで、買って、楽しんでいただける獺祭パリ店を開業する予定で、目下、最終準備に追われています。

 パリに<獺祭>? なぜと驚く方も、多いのではないでしょうか。