他人に迷惑をかけたくないからと、気を遣ってしまうタイプの人ほど、周囲に相談できずに引きこもりがちになる。
深刻な問題を抱えていても、親しい人や家族にさえ、本当のことを言えない。だから、わからないこと、困ったことがあったら、何でも相談できる。“依存体験”してもいい。それが、いま“居場所”に求められている役割なのではないか。
1月12日、大阪市内で「第2回ひきこもり大学」が開かれ、会場は当事者や元当事者ら30人近い参加者で満席になった。
今回、授業をしてくれた講師は、東京から駆けつけた20歳代後半の当事者男性Sさん。この日のために、わざわざ父親の車を運転し、片道6時間余りかけて日帰りで大阪を訪れた。
Sさんは、地方にある国立大学に入学したものの、1年生のときに調子を崩して不登校になった。
それでも何とか学校に通い、6年かけて卒業。その後、自閉症や発達障害の人たちの支援をしている法人で1年ほどバイトした。
しかし、自分自身の状況が悪化。人に会うことができない状態になった。
再び社会に関わろうと思ったきっかけは、ネットを見ていたとき、当連載記事で「ひきこもり大学」を知ったことだ。そして、昨年9月に都内で開かれた「ひきこもり大学」の授業に初めて参加。以来、少しずつ参加者と関わるようになって、大阪の授業にも申し込んだ。そこで、授業をやってみないかと勧められ、自分のアイデアを話したいと思うようになったという。
「マネージャーとして
自分を活かしてもらえませんか?」
「私のほうからお願いしたい仕事がある。私の時間をマネジメントして頂きたい」
Sさんは、そう切り出した。今回の学部学科名は「まだ決めていない」。
簡単な自己紹介の後、東京で「ひきこもり大学」などに関わるようになって感じたことがあると話す。
「自分よりも試行錯誤されている人たちがいて、こんなに頑張っているのに、なかなか社会が開かれない。それ以上の努力をどのようにすればいいのかが見えない。自分だけで何とかするのは無理だろうと思ったんです」
Sさんは、今までの価値観とは違うやり方で活動している人たちがいることを知った。自分も、違う枠組みで何かができるのではないか。
しかし、時間軸を考えて行動することが、自分にはできないという。