経営難に陥っていた米大手証券のリーマン・ブラザーズが15日、日本でいうとほぼ民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を申請すると発表した。

 ここ1週間の経緯を辿ると、9月7日に米当局によるGSE(政府系住宅金融機関)2社の公的管理化が発表されたことを大いに好感し、米国の株式市場はいったん上向いた。しかし、プラス効果も一日止まりで、平均株価はその後再び下落に転じた。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの6-8月決算の最終赤字が市場予想を上回る39億ドル(約4200億円)に達した見通しと発表されると、同社の破綻懸念が悪材料として注目されたのだった。こうした事態を受けて、先週末、米財務省、米連邦準備理事会(FRB)は、大手金融機関の首脳を緊急招集して、別の金融機関によるリーマンの救済買収を含む対応策を協議した。

 最終的に、当局および金融界がリーマンを潰すことで腹を括った背景は、“カウンターパーティリスク”の整理に関して目途が立ったからだろう。カウンターパーティリスクとは、取引先の倒産等により取引執行が出来なくなるリスクを指す。今回のケースでは、リーマンを相手方に他の金融機関が抱えているデリバティブなどの取引の不履行リスクがそれに当てはまる。リーマン破綻となって、契約が履行されなくなる(仮にリーマンを相手にドルを売るような契約をしていたら、それが売れていなかった形になる)わけで、他の金融機関に対する影響の見極めに時間を要したのだろう。

 リーマン破綻の影響がまだ十分見えていない段階で評価を下すのは本来まだ早いが、金融機関の状況をよく把握し、丁寧に民間ベースの再建の可能性を模索し、しかし、政府の資金をリーマン救済に投入しなくてもいいと判断した、米国の金融監督当局は、ここまでのところ「よくやっているのではないか」と筆者は思っている。もっとも、この評価は、ゴールドマン・サックス出身のポールソン財務長官その他の当局者が、リーマン破綻の金融システムへの影響を正しく見切っていたということが前提になる。

 しかし、「投資銀行」とも呼ばれる大手証券会社の一角とはいえ、証券会社をひとつ潰すのに、主に米国のだが、官民挙げてこれだけ騒いで肝を冷やすという状況には大いに問題がある。これは、投資銀行の活動のあり方に問題があるということではないだろうか。今回は、リーマン破綻を題材に、投資銀行のビジネスについて考えてみたい。

米当局がリーマン破綻を
遅らせた二つの理由

 振り返ると、かつてはドレクセル・バーナム(1990年に高リスクのジャンク債の運用失敗で破綻)のような当時の大手証券も、米当局は、潰れるままに潰してきた。