「勝率は悪くないのに、資産は増えていかない」こうした疑問を持つ個人投資家は少なくないでしょう。その原因は、「稼げる相場」と「動くべきではない相場」の区別を誤っている可能性が高いと考えられます。では、株のプロは、あなたがチャートを見つめているその瞬間、一体何を考え、どのように行動しているのでしょうか?『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』は、その思考をクイズ形式で体感できる一冊です。発売以来、投資初心者からベテランまで、熱烈な支持を集めています。著者は、日本株のファンドマネジャーとして2000億円超を運用してきた楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書に登場する「勝てる人のチャートの使い方」を紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で損失を膨らませる人の1つの共通点、プロが明かす「稼げる相場」と「稼げない相場」Photo: Adobe Stock

ボックス相場は「小銭稼ぎ」になりやすい罠

 株式市場の動きを大別すると、「ボックス相場」と「トレンド相場」の2種類があります。窪田さんは、チャートを使ったトレードで大きく稼ぎやすいのはトレンド相場であると強調しています。

 ボックス相場とは、株価が一定の価格帯(ボックス)の中で上がったり下がったりを繰り返す状態です。

 短期間に何度も売買できてトレードのチャンスが多いと考える人もいるかもしれませんが、値幅が小さいので大きく稼ぐことはできません。トレード回数は増えるものの、うまくいっても利益は限定的です。

 また、ボックス相場でのトレードは「株価が下値支持線に近づいたら買い、高値抵抗線に近づいたら売る」という逆張りの戦略です。

 相場がボックスを抜け出し、本格的なトレンドが発生した際、逆張りの思考回路で売買していると、大きな利益を逃したり、損切りが遅れて多額の含み損を抱え込むことになりかねません。

個人投資家が陥る「負けパターン」の正体

 次の図は、個人投資家に多い売買のパターンです。

株で損失を膨らませる人の1つの共通点、プロが明かす「稼げる相場」と「稼げない相場」

 4回のトレードで「3勝1敗」と高い勝率を残していますが、トータルで見れば損失を出していることがわかります。一体なぜ、このようなトレードに陥る個人投資家が多いのでしょうか。

 窪田さんは『株トレ』でこのように指摘しています。

「『益出しが早く、損切りが遅い』と、良い銘柄を早々に手放して悪い銘柄だけを残すことになります。そういうやり方だと、ボックス相場でちまちまと稼いでも、上昇トレンドで稼げずに下降トレンドで大損します」(『株トレ』より)

 株で成功するための原則は、「大きく勝ち、小さく負ける」トレードです。しかし、ボックス相場で小利を追い、損切りをためらうと、「小さく勝ち、大きく負ける」という真逆のトレードになってしまうのです。

 チャートを使ったトレードが上手い人ほど、ボックス相場では動かず、トレンドが出たのを見て動きだします。そして、上昇トレンドが続く限りは、少しの下げで売ったりはせず、保有し続けます。