ところで、全ての創造は模倣から始まります。

 スガシカオの場合は、Mr.チルドレンとオアシスを聴きまくって、ロックバラードの要諦を掴みました。 歌詞は、素面だと恥ずかしく自分を捨てて書けないので、酒を飲んで書き上げました。

 そして、2005年クリスマスの夜。

 最高のメンバーが集まります。そして出来上がったのが、今週の音盤「Progress」です。

 現代の吟遊詩人スガシカオは日本語をロックソウルのリズムに乗せる最高の技量を持っています。日本人離れしたソウルフルなリズム感と旋律美を持って、ナイフの如く切れ味の鋭い言葉を選択します。そして、一つの曲を織り成すストーリーを創り上げます。言葉と旋律がこれ以上は望めない幸福な結婚をしています。ライブ盤「Thank You」(写真)にそれが遺憾なく発揮されています。

 日本のロック史において忌野清志郎(本コラム第53回参照)に匹敵し得る才能でしょう。

5分37秒の物語

 ライブなどでのスガシカオは、いつも砕けて冗談一杯な感じで生真面目なところを感じさせません。だからといって、そんな外見が彼の全てではありません。実は、ナイーブで書生臭いくらい真面目な内面があるに違いありません。彼の歌を聴けば、そう思わずにはいられません。

「Progress」の歌詞が中学2年生の国語の教科書に掲載されています。

 『このクソ不完全な大人が書いた、クソかっこいい言葉達を学ぶがいい。』というメッセージがとてもスガシカオらしいですね。

 誰もが外見という鎧を身に着けています。実は、内面が露になることはカッコ悪いことかもしれません。でも、そんな内面こそが等身大の本当の自分自身です。そんな内面こそ鍛えないといけません。

 5分37秒の「Progress」に散りばめられた言葉達がそう語りかけて来ます。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)