工藤 でも世界ではそういう見方はされていない。この間アメリカのワシントンに行って、向こうの外交の専門家と話をしていたら、東アジアでの問題の根源は日本だって思っている人がけっこういるんですよね。

加藤 そう、ハーバードでもそうですよ。特に、2012年9月に日本政府が尖閣諸島を国有化してからというもの、日本が問題を引き起こす問題児・トラブルメーカーだって見られている場合が多かった。

 事実はどうであれ、そう見られていることを私たち日本人は知らなくてはいけない。その上で、対外広報力を非伝統的な手法で強化したり、多角的なコミュニケーションを通じて誤解を説いていかないといけない。

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工藤 いま僕らは、誰が悪いのかではなくて、まさに東アジアで戦争が起きてしまうほど、ガバナンスが効いていない危ない状況にあるっていうことに向き合わないといけないと思う。

 主権の争いばかりが、外交ではないと思う。主権問題からちょっと離れて、いま、戦争が起きてもおかしくない状況が、まったく管理されていないし、政府も本気で取り組んでいないということが問題ですよ。日中間のホットラインだってないんだから。

加藤 僕はフォーラム開催中、ネットでの報道とネット世論を観察していました。国営新華社通信や、民間のあらゆるポータルサイトで、ニュースはトップに近い目立つところで掲載されていましたよ。「日中間の問題を解決しなければならない」「日中の識者が難しい問題について話し合った」という中立的なトーンが多かったですよ。

 中国にとっても、このフォーラムは戦略的に利用しがいのある、貴重な対話チャネルだということです。これをただ感情的に「利用されているだけ」と見るのか、中国よりももっと強かに「これを機に何を仕掛けるか?」を行動で体現するかは日本人の魂にかかっていると思います。

 僕自身は、日本が真の意味で大国を目指すのなら、こういうところで戦略観と想像力を発揮しなければいけないと考えます。中国以上に強かにならないと中国とは渡り合えませんよ。そして、当然ながらそういう局面を最も強かに俯瞰しているのがアメリカです。一つだけ言えることは、日本は国内のしがらみやいがみ合いで時間や労力を無駄にしている場合ではないということです。