言論NPO代表の工藤泰志氏と国際コラムニストの加藤嘉一氏。日中関係、ひいては東アジア情勢をどう好転すれば良いのかについて語り合ってもらった 
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2013年12月26日、安倍晋三首相は現職総理としては7年ぶりに靖国神社に参拝した。中国、韓国は猛反発。米国をはじめとした各国からも東アジアを不安定化させる行動だとして不快感を示した。その2ヵ月前、「外交は政府が担うもの」という世間の認識を覆し、民間団体である言論NPOが企画し開催している「第9回東京‐北京フォーラム」(2013年10月26日、27日)が北京で開催されていた。そこでは「不戦の誓い」を柱とする「北京コンセンサス」を採択、発表するなど、最悪の日中関係に小さいながらわずかな光明をもたらしていた。言論NPO代表の工藤泰志氏は、日中関係が最悪と言われる状況下でも、対話によって課題を解決する姿勢と新たな枠組みの重要性を説き、フォーラム開催に漕ぎ着けた。国際コラムニストの加藤嘉一氏は、03年に単身北京に渡って以来、日中関係の専門家として、現在はアメリカ、ハーバード大学を拠点に言論、提言活動を続けている。二人は日中関係だけでなく、「当事者意識をもって自ら行動を起こす」という意識を強く持つことで共通する。ちなみにDOYとは「だったら、お前がやれ!」の頭文字だ。そんな二人に、現在の日中関係や外交について語り合ってもらった。(取材・構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

主権を主張し合う政府外交では
課題解決から離れていってしまう

くどう・やすし
言論NPO代表。1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒業。東洋経済新報社で、『金融ビジネス』編集長、『論争東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。その後、選挙時のマニフェスト評価や政権の実績評価、東アジアでの民間対話など、様々な形で議論を行っている。また、2012年3月には、米国の外交問題評議会(CFR)が設立した世界23カ国のシンクタンク会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の日本代表に選出。13年12月、東アジア地域の紛争回避など問題解決に民間で取り組む「新しい民間外交イニシアティブ」を発足。
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加藤 工藤さん、ご無沙汰しております。第9回の『東京‐北京フォーラム』では、「北京コンセンサス」に合意されましたね。政府同士の合意ではないですが、この日中関係が冷え込んでいるなかで戦争を起こさないということを確認できたのは、すごく大きな意味のあることだと思います。

 僕が初めて『東京‐北京フォーラム』に参加したのは、確か第3回だったと思います。北京大学学生時代に同時通訳を務めさせていただきました。担当は確か安全保障でしたが、なんか、すごい会議だなって感じました。これだけ率直に本音をぶつけ合う会議も珍しいと素直に思いました。資料も打ち合わせも何もなくて、通訳はかつてない困難を極めましたが(笑)。今、ハーバードに拠点を移していて、定期的に討論会やシンポジウムに出ますが、『東京‐北京フォーラム』のような“本気のプラットフォーム”はなかなかない。白熱感が違いますよね。

工藤 一昨年(第8回、東京開催)なんかはね、安全保障のセッションを全部ユーストで放送しちゃった。さすがにその予定はなかったのに。そうしたら、視聴者が一気に1万人以上になって、びっくり。

 楊さん(楊毅・前国防大学戦略研究所長・海軍少将)と宮本さん(宮本雄二・元駐中国大使)が「日中は対決するために集まったんじゃない、課題を乗り越えるために話し合うんだ。だから公開して議論するんだ」って言っていた。もう、僕は感動しちゃってね。