米経済成長率は今年3.5%に加速し、新興国を含む世界経済もじわり明るさを増すだろう。ドル円はその上昇気流に乗って115円を目指すと予想する。しかし今年の円安は一本調子では進みそうもない。

 理由の一つは円相場自体の内部にある。円安の牽引役としては円キャリー、すなわち投機的な円売りの比重が高まろう。その場合、思惑的に膨らむ円売りの後、益出しや損切りの買い戻しが出て、相場に波動が現れやすくなる。

 円相場の波動は外部リスクの刺激によってさらに増幅されよう。主に注視される外部リスクは、米自律回復の不調、欧州債務問題の再燃、中国の不安定化、そして新興国の脆弱さ。このうち米欧中発リスクは時とともに減退してきた感が強い。新興国もまた全体として徐々に底堅くなる途上と判断するが、緩慢な回復局面にぐらつきかねない脆さがくすぶり続けよう。

 金融緩和下で世界経済が力強く回復する局面は、経常赤字を抱える新興国・資源国の高金利通貨(リスク通貨)が上昇しやすい。「相対的な高金利+明るい景気見通し」が始動の条件だ。世界的にリスク投資意欲が強まると、まだ低金利のドルを売り、高金利リスク通貨を買うドルキャリー取引が活発化する。海外マネーの流入で通貨高になると、インフレが抑制され、海外マネーをさらに呼び込む。資源輸出国なら商品相場上昇と相まって、経常赤字が円滑に賄われ、ますます通貨高になる。