徐々に崩壊しつつある日本の医療制度
妊婦のたらいまわし事件や、増加し続ける高齢者の医療費など、最近医療にまつわる問題を耳にすることが増えてきたように感じます。かつては国民皆保険制度に守られ、世界でも最も安心な医療体制が整っていると言われた日本の医療制度も、今やこのままでは限界を迎えつつある証拠と言えるでしょう。医療の提供体制の問題と、医療費を支える仕組みの、両面の見直しが急務であり、今回はこれら両面について触れてみたいと思います。
医療の担い手不足に対する方策は、医学部定員の増加によって医療の担い手を増やすことと、切り下げが続いていた診療報酬を再び増加させ、医者の報酬を増加させることに尽きるようです。
民主党は、医学部定員を1.5倍に増やすことを掲げています。いつの時点と比べてなのか不明瞭ですが、2009年でおよそ8500人であったことを考えると4000人以上増員することになると思われます。また、地域医療を支えている医療機関に対して、診療報酬を増額することも謳っています。
対する自民党は、医学部定員を600人程度増加させることと、救急医療と産科に対して重点的に診療報酬のプラス改定を行うとしています。医者の数自身を急増させるのではなく、重点医療の報酬を引き上げることによって、必要とされる救急医療や産科のなり手を増やそうという意図が感じられます。
【出典:会計検査院/グラフ詳細は左下の「vizoo」マークをクリック!】
しかし、日本の歳出について考えると、医療費支出の国庫負担を含む社会保障関係費は年々増加しています(上のグラフ参照)。この背景にあるのが高齢化する社会でで、高齢化に伴う医療費負担の影響を真っ先に受けたのが、国民皆保険制度の一翼を担う健康保険でした。
それでは、昨年議論を呼び、選挙戦でも焦点の一つになっている「後期高齢者医療制度」について見てみることにしましょう。