14年前から
電子マーケティングに言及
2000年2月に初版が出版された『コトラーの戦略的マーケティング』も着実に版を重ね、04年1月には第20刷を発行しました。今年5月で83歳になる今日においても根強い人気を誇っています。
本書は4部構成になっています。本の題名にもなっている「戦略的マーケティング」についてまとめた第1部は、マーケティング機会の見つけ方からブランド・エクイティの構築の仕方に至るまで、プロセスが丁寧に解説されています。マーケティング・サクセスについての決まり文句を再検討し、そのなかに含まれる誤謬を明らかにするなど、経験豊富なマーケターにとっても新たな発見が多いはずです。続く第2部「戦術的マーケティング」ではマーケティング情報の開発や活用法、伝統的な「4P理論」への修正を加えたうえでの効果的なマーケティング・ミックスの実践法が提示されています。第3部ではプランニング、組織、評価、コントロールの側面から「マーケティング管理」について説明し、「欧米企業と比較した際、日本企業が今後もっとも目を向けなければならない」テーマであるとしています。
筆者にとってもっとも興味深かったのは第4部「変貌するマーケティング」のなかで語られた「電子マーケティング時代への適応」の部分です。本書が刊行された前年(99年)、日本はインターネットに明け暮れました。インターネット・マーケティング、Eマーケティング、インタラクティブ・マーケティングなどなど、マーケティングの分野でも新たな用語がいくつも誕生しました。
今日、インターネットの利用客は世界中で1億人以上にのぼり、一五〇万以上のドメイン・ネームが存在している。インターネット上を行き交う情報量は、一〇〇日ごとに倍増している。電子商取引額は、一九九八年には二〇〇億ドルだったが、二〇〇二年までに三二七〇億ドルに上ると予想されている。
その売買がさらに自働化されて便利になれば、サイバースペースは時代のさきがけとなるだろう。ビジネス相互の関係は深まり、顧客との間もスムーズなヴァーチャル・ネットワークによって結ばれることになる。インターネットの情報は、コストを発生させることもなく瞬時に世界中を駆けめぐる。売り手が潜在顧客を見つけることは容易になり、買い手が最高の売り手や最高の製品を見つけることも簡単になる。
従来、企業にとって多大なコスト要因であり、かつ取引の障壁にもなっていた時間と距離の縮小のインパクトは計り知れない。いままで通りの販売方法を継続する企業は、やがて市場から姿を消すだろう。
……マーケターは、顧客価値を見出し、それを伝達し、納得してもらうプロセスを基本的なところから再考する必要がある。個々の顧客を上手に管理する能力を磨かなければならない。また、顧客が期待する製品を、顧客をうまく巻き込みながら一緒に作り上げていかなければならない。(321~322ページ)