今回ご紹介するのは、「マーケティングの神様」フィリップ・コトラーの著書2冊『コトラーのマーケティング講義 基本コンセプト300』『コトラーの戦略的マーケティング』です。ともに10年ほど前の著作ですが、日本企業についての記述は今読んでも通用すると思わせるほど、洞察に満ちたものです。

83歳を迎えても今だに
影響力をもつコトラー

 昨年12月の日本経済新聞に、フィリップ・コトラーが「私の履歴書」を連載しました。その第一回目「マーケティングとは」は、以下の書き出しで始まりました。

「『マーケティング』と聞いて何を思い浮かべるだろうか。広告宣伝などの販売促進と思う人が多いが、それは氷山の一角にすぎない。一言でいうのは難しいが、業績向上と顧客の価値・満足を創造することで人々の生活の改善を目指す実践的な学問だ。」

ビジネスマン向けに解説した<br />「マーケティングの神様」による入門書『コトラーのマーケティング講義 基本コンセプト300』2004年10月刊。マーケティングに関する300もの質問に丁寧に回答しています。

 2004年10月に刊行された『コトラーのマーケティング講義 基本コンセプト300』では、「そもそもマーケティングとは何ですか?」の質問に対して次のように噛みくだいた説明をしています。

 マーケティングとは、どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げることです。満たされないニーズや願いを見つけ出す、と言い換えてもよいでしょう。そして、市場や利益機会に目を留めたら、その規模を定量的に評価します。自社の力がもっとも活かせそうな市場セグメントを特定して、適切な製品やサービスを企画してプロモーションを図るのも、マーケティングの役割です。(3ページ)

 マーケティングといえばコトラー、コトラーといえばマーケティング、ですね。そう断言していいほど、マーケティングの世界ではコトラーブランドが定着しています。現代マーケティングの第一人者として知られる米国の経営学者フィリップ・コトラー(ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院SCジョンソン特別教授)は「近代マーケティングの父」「マーケティングの神様」などと評され、日本でも数多くの著書が翻訳されています。