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スマートフォンの理想と現実

中国勢の台頭と、
急速にコモディティ化するスマートフォン

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第59回】 2014年2月28日
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ファーウェイ子会社のハイシリコン社製SoC Photo by Tatsuya Kurosaka

 そしてファーウェイの勢いを支えているのが、セミコンだ。サプライチェーンや市場での価格設定能力等、最終的な競争優位の源泉がチップセットにあることは、本連載でも度々指摘してきた。もちろん自前で製造するということには一定のリスクもあるのはサムスン(とアップルの悩ましい関係)が示している通り。しかし今回彼らの子会社であるハイシリコン社が製造したクアッドコアSoC「Kirin910」を発表し、新製品へも搭載したことからもわかるように、そこに敢えて踏み込んでいるということは、より一層の市場支配に向け自信を深めているのだろう。

 もちろん、すべてがバラ色というわけではない。通信機器(基地局やバックボーンネットワーク)の領域では、彼らの活発かつ見えにくい動きに対して、米英豪では国家安全保障に関連する懸念が広がっており、同盟国である日本もそうした議論は起こりつつある。そうした懸念もある程度は妥当なものだし、中国勢もそれらを払拭するような取り組みを進めるべきだろう。

 ただそれは、いわゆる「西側諸国の民主主義的な価値観」を是認する立場からの、懸念である。私自身は日本に暮らす以上、そうした価値観を支持しているが、現実には「そんなの関係ねえ」と考える消費者が、世界中には数多く存在する。そしてそれらを足がかりに、彼らはポジションを獲得している。

 こうした現実とどう対峙するか。モバイル産業に従事するすべての人にとって、あるいは21世紀の日本の経済社会にとって、大きな課題である。

悩めるサムスン、今年は「先進国」で一服か

 そんなファーウェイからの挑戦を受けているサムスンは、MWC2014で新しいスマートフォン「ギャラクシーS5」を発表した。すでにあちこちで紹介されているので、詳細はそちらをご覧いただきたい。

 サムスンもMWCでは大きなプレゼンスを持つベンダーである。特にアップルが参加しないMWCでは、端末に関してはナンバー1の存在感だ。ブースもファーウェイの2倍近い広大なスペースを確保し、いつも大勢の来客で賑わっている。新しく発表した端末の完成度も高く、特に欧州を中心とした世界市場での勢いを相変わらず感じさせるものだった。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

「スマートフォンの理想と現実」

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