インターネット上の仮想通貨であるビットコイン。先月末このビットコインの私設取引所「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」を運営するMTGOX社が、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。顧客から預かっていたコインや現金など約500億円が、返済不能になる恐れがあるという。このニュースは世界中を駆け巡ったが、この事件はマウント・ゴックス固有の問題か、ビットコインそのものが持つ構造的な問題なのか、固有の問題だとして、ビットコインは通貨の役割を果たしうるのかに関して議論が錯綜しているように見える。『貨幣進化論』(新潮選書)の著者で、金融論・貨幣論の専門化である早稲田大学大学院の岩村充教授に、問題の本質を整理してもらった。

「ゴールドラッシュ」で事件が起こっても
掘り出された「金」までニセとは限らない

いわむら・みつる
1950年5月東京生まれ。74年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行、ニューヨーク駐在員などを経て96年12月同行企画局兼信用機構局参事、98年1月早稲田大学大学院(アジア太平洋研究科)教授、2007年4月 研究科統合により早稲田大学大学院(商学研究科)教授。『貨幣進化論』(新潮社)、『貨幣の経済学』(集英社)、『コーポレ―ト・ファイナンス』(中央経済社)など著書多数。

――Mt.Gox事件はマウント・ゴックス社固有の事件と捉えた方がいのか、それともビットコインの仕組み自体に問題があったのか、そこはどうお考ですか。

 米国のビジネスウィーク誌がビットコインのブームについて、「ビットコインラッシュ」という言葉を使って表現しているので、19世紀の米国で起こった「ゴールドラッシュ」の時代のエピソードで話をしましょう。

 あのときに誰が最も要領よく儲けたか、リスクを冒さないで儲けたかというと、運が良ければ大儲けだが、あてが外れれば野垂れ死ぬしかなかった砂金採りたちではなく、彼らに鉄道便や馬車便あるいは船便を提供したり、馬やロバや荷車を売ったり、あるいはシャベルや食品を売ったりした事業者たちだったんですね。で、ここからは想像ですが、そうした事業者の中には、まったく金が出ない場所に砂金採りたちを連れて行ってしまったり、病気の馬や壊れかけの荷車を売ってしまったりした者もいただろうと思います。