今年10月、都内の住宅で火災が発生した。家を埋め尽くしていた莫大なゴミにロウソクの火が引火したとみられている。1人暮らしの住人は死亡。焼け跡には、亡くなった住人が20年にわたりため続けてきた10トンをこえるゴミが残された。捨てるのはもったいないとあらゆるものをため込んできたという。
いわゆる「ゴミ屋敷」だったこの家。悪臭と害虫は長年、近所の人たちを悩ませてきた。ゴミを撤去することは容易ではない。「これはゴミではない」と主張されれば、私有地にある「財産」となってしまうためだ。近所の人たちも行政もどうすることも出来ない状態が続いていた。
いま、全国でこうしたゴミ屋敷を巡るトラブルが多発している。いったいその背景には何があるのか。「追跡!AtoZ」では取材班を立ち上げ、実態を追った。
まず、訪れたのは埼玉県のゴミ屋敷。家の周囲には道路ぎりぎりまでゴミが積み上げられ、何度も崩れ落ちては近所の人たちを困らせてきた。家の主は去年、ゴミで歩道をふさいだとして逮捕され、厳重な注意を受けた。しかし、その後も変化は見られない。
鹿児島県では80代の男性が1人で暮らす家が10年前から大量のゴミであふれるようになった。男性は「ここにあるのはゴミではなく、まだ使えるものだから集めてきた」と言う。ゴミを勝手に持ち帰る行為は条例などで規制されているが、それを取り締まることは現実的には難しい。町内会では男性を説得し、これまでに2度、町内総出で撤去作業を行なったが、わずか数ヵ月で元通りになってしまい、もはやお手上げ状態だという。
見えないゴミ屋敷
「ゴミマンション」が急増
取材を進めると、新たなゴミ屋敷の存在が浮かび上がってきた。マンションや団地など、閉ざされた空間の中で人知れず増え続ける「見えないゴミ屋敷」=「ゴミマンション」だ。撤去作業は専門の業者が行なう。部屋の主が転勤などで退去が迫り、せっぱ詰まって依頼してくるケースが多いという。
部屋の中には、数年にわたって蓄積されたゴミが床一面に堆積し、歩くことも出来ない。6畳程度のワンルームから3~4トンのゴミが運び出されることも珍しくないという。片づけ業者には作業中も依頼が殺到。新たなビジネスチャンスとみて引っ越し業者やリーフォーム業者など異業種からの新規参入も急増し、不況の中、活況を呈していた。
一体どんな人が、なぜゴミをため込んでしまうのか。取材班はその素顔を徹底的に探った。
「仕事で疲れてしまって、家では無気力になってしまう。」(メーカー技術者 30歳)