今回は、社員数が15人前後の広告制作プロダクションで働いていた24歳の女性を紹介しよう。すでに退職しているが、在籍中は酒の場で先輩たちから服を脱ぐことや、男性社員にキスをすることなどを命じられていた。それを「ホステス」とか、「警察ごっこ」と社内では呼ぶのだという。

 それらの「いじめ」を周囲に指示するのは、主に30代前半の女性社員だった。あたかも「女帝」のごとく、かねてから自分よりも若く見栄えのする女性社員を、いじめ抜いていた。男性社員がこうした「いじめ」を女性社員にするのであれば、それは明らかなセクハラであり、罰せられて然るべきだ。しかし、先導しているのが同性である女性社員というから、話が複雑になるし、なおさらタチが悪い。

 今回は、なぜこのプロダクションでこれほどの異常事態が起きているのか、その構造に迫りたい。程度の差こそあれ、読者諸氏の職場でも似たようなトラブルは起きていないだろうか。「悶える職場」の課題を、一緒に考えてみてほしい。


「ホステス」に「警察ごっこ」――。
異様な雰囲気に包まれた憂鬱な忘年会

 2011年の暮れ、渋谷のカラオケ店。筆者は、JR渋谷駅からNHK放送センターに向かう道の途中の雑居ビルにいた。ある広告関係者の飲み会に呼ばれたのだ。

「抱きしめていいですよ!」「まだ、男を知りませんから」「キスをしても、OK!」……。

 広告制作プロダクションに勤務する、15人ほどの会社員が酒を飲み、酔っ払いながら大きな声で騒ぐ。平均年齢は30代前半。その中に数人女性がいるが、一緒に大騒ぎをしている。立ち上がれないくらいの泥酔状態だ。

 15人の真ん中に、30代後半から40代後半の男性が3人いる。困惑した様子の彼らは、大手広告代理店のプロデューサー(役職は部長待遇)だ。

 その横には、24歳の女性・熊本(仮名)が、脅えた表情で座る。少し震えているように見えた。半年前に、プロダクションに新卒(大卒)として入社した。熊本は、この日「ホステス」をさせられていた。「ホステス」とは、この会社で面白くおかしく使われる言葉である。