Photo by Masato Kato
日本発のAI基盤は、本当に実現できるのか。富士通が、自社開発の半導体チップ「MONAKA(モナカ)」の量産や米エヌビディアとの提携拡大を通じ、日本企業が国内でAIを開発・運用できる「ソブリンAI」の整備を加速している。2027年のモナカ量産を控え、「メード・イン・ジャパン」のAI基盤をどのように構築しようとしているのか。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#21では、富士通のヴィヴェック・マハジャン副社長CTO(最高技術責任者)を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
米国製CPUを使っていて
「ソブリンAI」と呼べるのか?
――富士通と米エヌビディアの提携が拡大しています。一つは、フィジカルAI分野で、ファナック、安川電機、川崎重工業と進める提携です。もう一つは、富士通のCPU(中央演算処理装置)とエヌビディアのGPU(画像処理半導体)を結合して新しい計算基盤を開発する計画です。いずれも、富士通のCPU「MONAKA(モナカ)」が大きな役割を果たしますが、エヌビディアは富士通の半導体チップにどんな期待を持っているのでしょうか。
エヌビディアとの提携のきっかけはモナカです。AIの推論やエージェント型AIではCPUの重要性が増してきますので、エヌビディアによるモナカへの評価は非常に高いと思います。
モナカの提携先は、エヌビディアだけではありません。米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)もありますし、米スーパー・マイクロ・コンピューターもあります。他にもさまざまな企業がモナカに興味を示しています。
モナカはもともとデータセンター向けのCPUですが、英アームの設計をベースに開発したので、アームの設計を採用するCPUが利用される分野ならどこでも展開できます。来年からAI向けに量産が始まりますが、われわれの一番大きな狙いは「AIエージェント向けCPU」にすることです。AIエージェントの応用分野はいくらでもありますが、フィジカルAIはその一つです。
――2027年に予定しているモナカの量産は、どのように始まるのですか。
来年3月末から台湾積体電路製造(TSMC)で生産を始めて4月には出荷します。モナカの展開先は二つあります。一つはCPU単体の製品として他社のサーバーメーカーに供給すること。もう一つは富士通ブランドのAIサーバーへ搭載することです。それをAIサーバーの生産拠点の笠島工場(石川県かほく市)で組み立てます。
――日本企業では、経済安全保障の観点から、自国内でAIを開発・運用する需要が高まっています。
まさに、われわれが狙っているのは、企業のソブリンAI(自国で管理・運用できるAI)へのニーズです。富士通では、もともと23年ごろからソブリンAI戦略を進めてきましたが、今になってようやく世の中がその重要性に気付いたように思います。
今や誰もが「ソブリンAIが重要だ」と言います。しかし、果たして米国企業が開発したCPUを使って「ソブリン」といえるでしょうか。米国は友好国だから問題ないという考え方は理解しますが、セキュリティー面を真剣に考えるなら、それだけでは真のソブリンとはいえません。
実は、富士通のソブリンAI戦略は欧州でも高く評価されています。特にドイツ、スペイン、イタリアでは、「米国に依存しないAI」のニーズが非常に強い。米国以外で世界市場向けのAIサーバー用CPUを本格的に提供している企業は極めて限られています。だからこそ、富士通の取り組みは大きな注目を集めています。
果たして富士通は、日本企業向けの「ソブリンAI戦略」をどのように描いているのか。次ページでは、その責任者を務めるマハジャン副社長CTOが、エヌビディアとの提携や、国産AIサーバーにとどまらない重層的な戦略を明かす。さらに「メード・イン・ジャパン」に強くこだわる富士通が、1.4ナノメートルの次世代モナカの生産で、ラピダスをどう活用しようとしているのか、その具体策についても語った。







