ベースアップは、
「悪い固定費」?

 そして、他の条件が変わらなければ、固定費の増加は企業の損益分岐点売上高(利益がゼロになる売上高)を引き上げる方向に作用するので、ベースアップを実施すると、それだけ利益を出すためのハードルが高くなります。

 しかし、実は固定費の増加は必ずしも悪いことばかりではありません。仮に、固定費しか存在しない会社があったとしましょう。いったん売上が固定費を上回ると、それ以降は売上の増加がそのまま利益の増加につながります。

 一方、変動費しか存在しない会社の場合は、売上が増加する局面では、売上の増加に伴って変動費も増加するので、売上の増加ほどには利益は伸びません。

 つまり、将来的に売上の増加が見込める場合には、思い切って設備や人材に投資して固定費を増やすのも正解なのです。

 話をベースアップに戻すと、ベースアップは投資と言うよりは単に固定費を増加させるに過ぎません。それならば、ベースアップに回す金額を正社員の採用増加に振り向けたほうが効果的です。なぜなら、正社員を増やす「人材投資」は、将来の人件費上昇に対するリスクヘッジにつながるからです。