JAL問題の解決に当たり、政府は事業再生の専門家5人に特別タスクフォースの結成を依頼した。日本では、今回のタスクフォースのように、個人が各場面に応じて持つ名刺や肩書きを変えて仕事をする形は定着していないが、アメリカではプロジェクトベースでさまざまな会社の名刺を持って仕事をする働き方が広く定着している。それらはインディペンデント・コントラクター(Independent Contractor:IC)と呼ばれる人たちであるが、その数はアメリカでは1000万人を超えると言われている。
カメレオン名刺で企業内部の人間となる
ICをあえて日本語に訳せば、独立業務請負人というニュアンスである。たとえば、人事のプロである個人が、ある企業の人事プログラム改善プロジェクトに1年間携わることとなり、その1年間はそのクライアント先の社員のようにふるまう形だ。その会社にデスクを持ち、毎日出社し、名刺もその会社のものとなる。もっとも、常勤でなくとも週に数日という非常勤の勤務体系などでも可能である。
一般的に、企業が人事コンサルタントと係わるときは、コンサルタンティング契約を結び、あくまでも外部のアドバイザーとして雇う形が多い。しかし、外部の人はあくまで外部の人であり、できることには限界がある。しかし、ICの形態だと、人事コンサルタントは外部の人ではなく内部の人となるためより問題を見つけやすくなり、改善策を施す際も企業内部の人間の理解を得やすいというメリットがある。
実際、上記JAL特別チームの5人のうちの1人は元産業再生機構代表取締役専務で、現在は経営共創基盤代表取締役CEOを務める冨山和彦氏であるが、この経営共創基盤が企業に対する事業再生や事業効率化のコンサルティング業務を行う際は、スタッフをクライアント先に派遣し、スタッフはクライアント先の名刺を持って行動をする形式を取っていることが多いと聞く。経営共創基盤の社員として外部アドバイザーとして存在するのではなく、あくまでクライアントの一社員になりきることで適切な経営改善策を発見し施すこととなる。まさにIC的な関わり方、働き方ということになり、経営共創基盤はICである専門家集団ということになる。