高尚な科学の世界だって、聖人君子だけで構成されているわけではない。「女性」が安易にPRに利用されてしまうような環境は、日本国中、どこにだってある。それにうんざりしながらも、そうしたニュースがちっともなくならないのは、私たちを取り巻く現実が変わっていないからだ。

人間は「うさん臭いもの」にこそ
魅かれる

 考えてみたら、佐村河内氏も最初からうさん臭い人物だった。だからこそ、多くの人が彼に興味を持ったのだ。

 人間はそもそも、「うさん臭いもの」に魅かれる生き物だ。新興宗教の教祖はたいてい、見るからに怪しい。「どうしてこの人を信じられるんだろうか?」と思わせるような教祖ほど、なぜか、信者を集めてしまう。

 宗教はたいてい、「ストーリー」を伴って拡散していく。ストーリーは誰でも簡単に作れるように思えて、扱い方がとても難しい。毒にもなれば、薬にもなる。宗教が人々を救うこともあれば、思考停止させることもあるのと同じだ。

 やたらセールストークが上手な営業パーソンに、いらないモノを買わされた経験は誰にでもあるだろう。それと同じように、よくできた感動的なストーリーほど、買う方は注意してかからなくてはならない。

 ストーリーを構成する材料の質が悪いと、それを伝えた第三者がウソをつくことにもなってしまう。材料の吟味は必要だ。今回、私たちがメディアを通じて摂取してしまった2つのストーリーは、その吟味が不十分なケースだった。

中身の「質」より「拡散力」が
モノを言う社会

 小保方さんの問題に関しては、「マスコミが科学を報じずに彼女のプライバシーばかりに注目した」と非難する意見も数多く見られた。しかし、事実はもっと複雑だろう。