ここ数年、年率30%以上の高成長を続けてきたデジタル一眼レフカメラ市場が、一転してマイナス成長の危機に直面している。
カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計によれば、主要メーカー14社の2009年1~2月の全世界向け出荷金額は、前年同期の半分にも満たなかった。全市場の4割を占める欧州が前年同期比51%減、北米は80%減、日本が56%減と惨憺たるありさまだ。いったい何が起きているのか。
異変の兆候は、昨年の暮れから表れていた。日本市場では、11月単月の販売金額が07年10月以来の前年割れとなった。その後、今年2月まで4ヵ月連続で水面下に沈んでいる(BCN調査)。景気後退による消費の冷え込みを受け、「型落ちモデルの在庫を、値段を下げてさばいていた」(道越一郎・BCNアナリスト)ためだ。
いや応なく、メーカー各社は減産を迫られている。調査会社テクノ・システム・リサーチによれば、09年のデジタル一眼の生産台数は約870万台にとどまり、前年比100万台の大幅減少とならざるをえない見通しだ。
今のところ業界団体であるCIPAは、09年の出荷台数を前年比7%増の1035万台として、強気の見通しを崩していない。「日本市場は消費者心理が冷え込んでいるものの、潜在ニーズはある」(西口史郎・パナソニックマーケティング本部長)と考えているからだ。パナソニックでは、フルハイビジョン動画撮影機能を搭載した小型軽量の新機種を4月末に発売する。キヤノンも同じ機能の付いたモデルを4月末に投入、ニコンも近々新製品を発表する模様で、「新機能の提案で買い替え需要を喚起する」(西口本部長)方針だ。
各社は、価格競争の厳しいコンパクトデジカメの収益率の低さを、高成長・高収益のデジタル一眼で補ってきた。稼ぎ頭であるデジタル一眼が成長路線に戻らなければ、事業全体の収益構造が崩れる。新製品が出揃うボーナス商戦が正念場だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)