猫もしゃくしも環境重視をうたっているが、それが“飯の種”になるかどうかは別の話だ。
総合化学最大手の三菱ケミカルホールディングスは2011年度から始まった中期経営計画を大幅に見直し、最終年度の15年度の売上高を当初計画の5兆円から4兆3000億円に、営業利益を4000億円から2800億円へ下方修正した。
基盤事業である石油化学製品の市況悪化に加え、電子部材が液晶不振の影響をもろに受けたのが主因だが、成長分野と位置付けてきた環境・エネルギー事業が期待はずれになっているからだ。「有機太陽電池や有機光半導体、LED照明は、市場の立ち上がり時期を見誤った。伸びるどころか、まだ夜明け前の製品もある」と小林喜光社長は自嘲気味に語る。
例えば炭素繊維は、本格的な需要拡大に向けて国内工場を新設したが、11年6月の操業開始後も稼働率が上がらないまま。自動車向けは一部の高級車で採用が進んでいるものの、量産車での普及は20年以降との見方が大半だ。
風力発電の風車の羽根も主要用途ではあるが、需要は米国の風力発電に対する優遇政策に大きく左右されるため未知数という。
リチウムイオン電池については、車載用市場の拡大にはまだ時間がかかりそうだ。同社はこれまで主要4部材をすべて手がけることを強みとしてきたが、今後は投資を絞る方針。予定していた数百億円の設備投資を先送りした。
それでも事業がいつ花開くかわからないだけに、研究開発を怠るわけにはいかない。とりわけ、技術的な差をつけるには、研究開発費をしっかり確保しておくことが必要だろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)