ビジネスパーソンの研修、中でも幹部候補生の研修などにも取り入れられているが、危険もある。個人で取り組むには荷が重い。もちろん研究の余地はあるし、こうした方法を否定はしないが、キャリア開発という目的を考えると、少し迂遠な気がする。しかし、繰り返しになるが、そこまでいかないと本当の意味での自己啓発はできない。これは多くの人にとっては無理なことだろう。

 そこでむしろ取り入れてほしいのが、企業変革の方法論だ。一言で表現するなら、まずは行動を変えてしまい、意識は後から変えればいいという考えである。

 企業変革を考えるとき、一般的に“意識改革”という言い方をするが、正直に言って、社員一人ひとりの意識を変えることは簡単ではない。そこで、企業変革では、取るべき行動を決め、(いろいろと反対意見もあろうが)とりあえず決められた行動をとってもらう、という方法をとる。その行動に慣れてくるにしたがって、内面も少しずつ変わるというわけだ。

「このままで大丈夫」という正常化バイアスを
セルフ・リーダーシップで打ち消せ

 企業変革の方法論のベースとなるのがハーバード・ビジネススクールのジョン・コッター教授が著した、『企業変革力(Leading Change)』(日経BP社)だ。ここに変革を推進する8段階プロセスが登場するが、このプロセスは、非常に普遍的である。どの学者の説もだいたいこれに似ている。それは以下のようなものだ。

第1段階:危機意識を高める
第2段階:変革推進のための連帯チームを作る
第3段階:ビジョンと戦略を生み出す
第4段階:そのビジョンを広く周りに知らし、人を巻き込む
第5段階:広範囲の人にエンパワーメントして、変革を進める
第6段階:短期的成果を実現する(勢いをつける)
第7段階:成果を統合し、さらなる変革を推進する
第8段階:新しい方法を企業文化として定着させる

 ちなみに私は、第一段階の前の第0段階が必要だと思っている。それは危機感を持った「変革のリーダー」が出現するという段階だ。

 さて、私は個人変革においても、だいたいこの手順に従えばいいと考えている。もちろん組織と個人の違いがあるから、そのままというわけではないが、この手順が参考になる。

 自己変革するためにまず重要なことは、自分に対してリーダーシップを発揮することだ。これまでにも書いたが、自分が自分の人生の主人公となり、セルフ・リーダーシップを発揮することが前提となる。それが、私の言う第0段階と言える。