日本国内の医療の現場において、漢方製剤に対するニーズが高まっている。いわゆる西洋医学の医師たちも漢方薬を処方するケースが増えており、厚生労働省の調査によると、漢方製剤等の生産金額は2011年には1422億円と、2006年の1169億円と比べて、約22%の伸びを見せている。

 高齢化社会では、単なる延命ではなく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)の維持向上が求められる。複数の病気を抱えていることの多い高齢者の治療現場で、人間を心身両面から総合的に捉え、多くの病気や症状を複合的に治すことに重きを置く漢方薬が見直されているのだ。実際、漢方薬がQOLを高めると期待する医療関係者は増えている。

東京生薬協会が新潟県新発田市内で行った、ミシマサイコやトウキ、ハトムギの種蒔きの様子。ミシマサイコはめまいや耳鳴り、内臓下垂等の改善に、トウキは婦人薬の主薬として、ハトムギは消炎・利尿・鎮痛・滋養強壮用等に利用される

 生薬は、植物の葉や実や根などを加工したものであるが、医薬品用生薬は約9割を輸入に依存している。さらに、そのうちの約9割を中国からの輸入に頼っており、安定供給の確保という面で様々な問題点が指摘されていた。

 龍角散を中核とする公益社団法人・東京生薬協会で専務理事を務める末次大作氏と事務局長を務める田中建次氏は次のように語る。

「調達先を中国に依存しすぎることで、価格の上昇や品薄感、品質のバラつきなどの課題があります。消費者の安全・安心の観点からも、精度の高いトレサビリティー(生産から加工、流通までの追跡調査が可能なこと)を実現できる国内産生薬の確保が注目されるようになっています」