「文句言い」がイノベーションを起こす
岩佐 すごくわかります。調整役の校長先生や、御用聞きで面倒見の良いあんちゃんみたいな人は、現実の被災地にもたくさんいます。でも彼らはイノベーターじゃないんです。新しいことを始めるためには「当たり前」と思われていた秩序に疑問符を投げかける小野寺先生のような存在が絶対必要です。しかし、小野寺先生だけでもまだ新しいことはできない。
真山 そうなんですよね。校長先生やあんちゃんのような人の力も借りる必要がある。その部分を上手くやったのが小野寺であり、岩佐さんなんだと思います。小野寺は「俺はあくまで『文句言い』だ」と言います。外から文句を言うことで、中の人を目覚めさせる。小説の場合、それに素直に反応できたのが子どもたちでした。
岩佐 僕も自分の本で書きましたが、大切なのはポジションを取ることだと思っています。それは自分が批判されてボコボコになってもいいから地元のコミュニティーに入っていって、なにかを発信するということです。これが地元の人や、ただ外部から来た人だとなかなかできない。ですから僕は当事者性をもった「部外者」という役割を演じようと決意しました。そういう意味で小野寺先生にはシンパシーを感じます。
(後編に続く)
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