Photo by Shingo Matsuda
東証グロース上場のSAAFホールディングスを巡る経営権争いが、泥沼の委任状争奪戦へと発展している。創業者で元社長の前俊守氏は「現経営陣に会社を乗っ取られた」と主張。これに対し現体制を率いる左奈田直幸社長が取材に応じ、「コンプライアンス意識が欠けていると、創業者でも上場企業の経営を続けることは難しい」と反論した。連載『株主総会2026』の本稿で、不透明な投資家グループによる「ウルフパック戦術」の実態を激白し、新体制の正当性を語る。(フリーライター 松田晋吾)
問われる「規律」か「創業の功」か
対立を決定付けた「私的流用」の認定
SAAFホールディングスは2018年10月、ITコンサルティングのITbookと、前俊守氏が創業した地盤調査改良のサムシングホールディングス(現サムシング)との統合によって誕生し、24年9月に現社名へと移行した。現在は地盤調査のほか、システムコンサルなどを幅広く手掛ける。4月21日現在の時価総額は76億円。
事態が動いたのは25年3月から4月にかけてのことだ。当時社長だった前氏ら経営陣が経費を私的流用しているとの内部告発が常勤監査役にあった。内部調査の結果、一部の経費について私的流用が疑われるとの調査結果が報告され、同年4月、前氏は代表取締役を辞任した。松場清志取締役副社長(現会長)が代表取締役社長に就任した後、6月に左奈田直幸上席執行役員が代表取締役社長の座に就いた。
ところが左奈田体制の発足から半年余りが過ぎた26年1月、前氏が全取締役の改選を求めて臨時株主総会の招集を請求した。その後、2月に入って、会社側は買収防衛策の導入を決議し、前氏側が複数の投資家が連携して株式を買い集めて経営権奪取を狙う、いわゆる「共同協調行為」に該当する可能性があるとして検討に着手。社外取締役らで構成する独立委員会への諮問を行うことを取締役会で決議した。
3月には、独立委員会の勧告を受け、取締役会がウルフパック戦術を認定。個人・企業の計16者が、形式上は別々の株主でありながら実際には連携していると判断された。今後は、手続きに応じない場合は「株主意思確認総会」を招集し、対抗措置の発動を株主に諮る。具体的には新株予約権の無償割り当てによる株式希薄化などを想定している。
独立した立場の弁護士らから構成される特別調査委員会は4月、前氏の親族とのゴルフや会食などについて、私的流用があったと認定した。
一方、前氏はダイヤモンド編集部のインタビューで、辞任は「事実上の解任」であり、背景には「経営統合以来の権力闘争と現陣営による謀略があった」と反論。自身へのウルフパック疑惑についても「身に覚えがない」と否定している(『「私を追い出したのは現経営陣の謀略だ!」SAAF元社長がウルフパック疑惑の真相と会社乗っ取りの全貌を初激白』参照)。
ウルフパック問題を巡っては、千葉県のフリーペーパー発行会社である地域新聞社が、ウルフ勢と経営権を巡って対立している。今回SAAFが認定した16者の中に、地域新聞社が共同協調行為をしたと認定した会社・人物の名が複数、重複して含まれている。
YN企画、Happy horse、ほか個人2人が地域新聞社が認定したウルフ勢とかぶっているほか、過去のウルフパック問題に絡んだとされる人物も認定された。SAAFは認定対象者に、取得目的や協調の有無を問う質問状を送付。回答した複数者はいずれも共同協調行為を否定している。
5月12日予定の臨時株主総会に向け、両陣営が激しい委任状争奪戦を展開する中、渦中の左奈田社長が取材に応じた。次ページで詳報する。







