東北の経済復興に向けた課題は多い。ただ、震災を機に新たに立ち上がった起業家も多く、彼らの顔は一様に希望に満ちている

 東日本大震災の発生から4年目を迎えた。瓦礫の山は福島の一部を残して9割がた片付き、高台移転や防潮堤の整備といった土地利用計画、上下水道や道路、災害公営住宅などの整備・建設計画にも目途が立ち、いまだ仮設住宅での生活を余議なくされている10万人の移転も、この先は徐々に加速すると見られている。一般社団法人RCF復興支援チーム代表理事・藤沢烈氏によれば、現況は、「ハード面での『復旧』から、いよいよコミュニティの再生や産業の活性といったソフト面での『復興』のステージに移行する段階」だ。

 ただ、この先の復興について、悲観的な見方をする向きは少なくない。「震災後も沿岸部では人口流出が進み、2~3割減となった町村もある。経済が再生し、安定した雇用が生まれなければ人は戻らない。家を再建しても町はガラガラになる」「売上が回復せず、補償金・補助金で持ちこたえている企業が多い。国や自治体の支援が収束したら直接被災地の震災関連倒産はますます増える」といった予測が典型的なものだ。また、福島第一原発に至近の「帰還困難区域」のように、いまだ復旧の先行きすら見えず、長期間にわたり町民が全国各地で暮らすため、連帯感の維持に悩む自治体もある。

 いかに経済の流れを良くし、地域の魅力を発信し、離れた人口を再度呼び込むかは被災地の重要課題の一つとなるが、そんな中、日本経済新聞が「被災企業、回復は二極化 震災3年、設備復旧でも『売上高増』『7割以下』拮抗」と題し、興味深い調査結果を掲載した。記事は、「被災企業へのアンケート調査で、設備が8割以上復旧したと答えた企業は7割あったが、その中で復旧後の売上高が震災前より増えた企業と、7割以下にとどまる企業の割合がほぼ同じだった。好調組は震災を機に事業戦略を練り直し実行した企業が目立つ」(2014年3月7日付朝刊)と報じている。

 好調組の中には土木・建築関係など“復興特需”を享受している企業や、操業不能になった同業の仕事を引き継いだことで売上が向上した企業もあると見られるため、過度に楽観視はできないが、被災地で気を吐く企業は確かに存在する。調査対象のような既存企業だけではなく、被災各域には、震災を機に新たに立ち上がった企業も多くある。彼らは医療介護、心的ケア、子どもたちの学習支援、観光客の誘致といった地域課題、言い換えれば需要のあるところをドメインに活動しており、特筆すべき成長を見せている。筆者らは過去1年、Googleが主導するビジネス支援プロジェクト「イノベーション東北」の活動を通じ、約500件の新旧事業者と直接的に関わってきたが、結果として、これら企業が数年のうちにより大きな成果を顕在化させ、一つひとつの粒は小さくともその集積が「新しい東北」の基盤を為すことを強く信じるに至っている。