2007年に最もヒットした歌「千の風になって」。
秋川雅史さんの歌は力強い歌声と、亡き人への思いをめぐらせる歌詞が相まって、聴く人を感動させました。
私のお墓の前で
泣かないでください
そこに私はいません
眠ってなんかいません
この歌では、亡き人が風ばかりでなく光、雪、星、鳥に乗り移って今も生きていますという内容です。これを簡単に言えば仏教よりももっと原始的である、万物に精神が宿るという「アニミズム」的な信仰といえるでしょう。
この歌がヒットしたように、現代人は精神的なものを求めています。物質的には満たされた日本人にとって、やはり精神的な満足が今こそ必要なのでしょう。テレビに盛んに「スピリチュアル」系の番組が放映されるのには、そんな裏側があるのではないでしょうか。
インタビューで尋ねたある住職は「現代こそ、仏教が出番のときなのに、なかなか新しいことができず、歯がゆい思いをしている」と語ります。現代では仕事上の問題で心を悩ませる人が多くおり、不登校児もかつてに比べて増加しています。格差社会といわれるように、金持ちがいる一方で、ネット難民のように貧困にあえいでいる若者や、身寄りのない1人暮らしの老人もおり、宗教が活躍する場は増えているといっていいでしょう。
ただ、今や多くの寺の住職は、葬式と法要のときにお経を上げ、遺骨を納める墓を管理するだけの「読経&墓管理業」に成り下がってしまっているのでは、と危機感を募らせる住職がたくさんいます。
住職に葬式を頼んだら、自分でお経を読まずにテープレコーダーを流していた、お布施が少ないと文句を言われたという極端なケースさえあります。