景気は二番底に向かう危機にある。底割れの危険すらある。今日の危機を3年前から予感し、社員に警告してきた経営者がいる。ソフトウェア企業、アシストの社長、ビル・トッテン氏だ。たとえ大不況に陥っても、「社員のリストラはしない」と約束し、働き方の変更を着々と進める。著書『「年収6割でも週休4日」という生き方』で明らかにした大不況の乗り切り策とは何か。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」副編集長 大坪亮)
1941年、米国カリフォルニア生まれ。カリフォルニア州立大学卒。南カリフォルニア大学で経済学博士号取得。72年、システム・デベロップメント社の社員として市場調査のために来日。同年アシストを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。06年、米国国籍を棄て、日本国籍を取得。『愛国者の流儀』(PHP研究所)など著書多数。近著に『「年収6割でも週休4日」という生き方』(小学館)。
─日本経済の規模が6割にまで縮小する大不況の可能性を唱え、「人員リストラを回避するために今から準備しろ」と提言しています。
僕は以前から、人員リストラをする経営者を強く非難しています。それは悪いことです。しかし、彼らも、好んでリストラをしているわけではない。業績が急激に悪くなって、仕方なく一部の人を解雇しているのです。
経営者として問題なのは、危機が訪れる前にリストラを回避するための施策を打っていないことです。なぜ準備しないのか。現状の延長線で、ものごとを考えてしまうからです。これは僕も含めて、人間は皆同じですが、そういう傾向にあることを肝に銘じて、「このままでいいのか」と考える癖をつけることが大切です。特に、多くの人の生活を預かっている経営者は、そうしないといけません。
─社員にはリーマンショックが起きる前から、経済悪化の警告を発していたとのことですが?