安全を確認できない行動は
一切しない

 外に避難をしたらしたで、大変でした。3月11日は、とにかく寒い日でした。雪が降り、風が吹き、吹雪のような状態になってしまったのです。

 お客様の中にはアロハシャツ(館内着)や水着の方もいました。ホテルから毛布やガウンを出したり、バスタオルをお配りしたりして、寒さを凌ぐ急場の対策を取りましたが、それでも寒くていられない。だんだん、余震の間隔が長くなり、もう寒さには耐えられないということで、建物の中に入りました。

――スタッフへの指示はどのような形でなされたのですか?

 皆を集めて打ち合わせをするとか、ミーティングを開くとか、そんな時間は持てませんでした。目の前のお客様にどうやって自分たちが、そのご要望とか、お願いに対応するか。そのことだけに集中していましたので。

 ただ、1つだけスタッフと約束したことがありました。
 それは「安全を確認できない行動は一切しない」こと。それだけですね。

 上階ほど揺れが大きかったので、温泉や水道管が抜けた箇所もありました。ガラスが割れていたり水浸しで危険な階もあったりして。いつ余震がくるかもわかりません。ですので、「貴重品をお部屋に取りに行きたい」というお客様のご要望があった際は、必ずスタッフがついて、長靴を履いて、お部屋に行って取って戻って来る。それを何回も何回も繰り返しました。

 マイカーで来られた大勢のお客様は、自分たちのご判断でお帰りになられた。一方、無料バスなどでお越しになり、動きのとれなくなってしまった方が残されてしまったんですね。皆さんは一刻も早く帰りたいという心理でしたが、「安全の確認ができない状況でしたので、行動を起こすことはできませんでした。お客様にご理解とご協力をお願い申し上げます」ということをスタッフ全員で言い続けました。

 幸い、ライフラインは生きていたんですよ。電気、ガス、水道が使えたんですね。そこで、お客様にご説明をしまして、避難生活に入りました。

 電気が使えるっていうことは、当然明かりもつきますし、暖房がきく。水道が使えるということは、飲み水の確保と、トイレが大丈夫なんですね。これは大きかったです。トイレが使えないとパニック状態になりますから。それからガスですね。ガスが使えるということは、食事の支度ができるんです。

 食材を確認したところ、1000人規模で5日分ぐらいは十分在庫はあると。ということは、5日間ぐらいは避難生活ができると判断し、お客様にもすべて包み隠さずお話をし、避難生活に入ることにしました。