リスクは、社会が勝手につくったルールでしかない

究極のリスクは死ぬことだから、<br />「何かが起こる方」に賭けるしかない。<br />―――白木夏子×南壮一郎対談前編白木夏子(しらきなつこ)株式会社HASUNA代表取締役・チーフデザイナー。1981年鹿児島県生まれ、愛知県育ち。短大を卒業したあと、2002年ロンドン大学キングスカレッジ進学。国連インターン、投資ファンド会社を経て、2009年HASUNA設立。人、社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーブランドを日本で初めて手掛け、注目を浴びる。テレビや雑誌やはじめ、あらゆるメディアに出演し、そのビジネスと生き方に絶大な支持を集めている。世界経済フォーラムGSCメンバー。

白木 南さんの最初の大きな挑戦は、やはり金融業界からスポーツビジネスに転身しようと決められたときですか?

 そうですね。そのとき、人生で初めて「リスク」という言葉を意識したかもしれません。

白木 確かに、人生のリスクって学生時代にはなかなか実感しませんものね。

南 同じ会社に居続けることを想定すると、サラリーもキャリアも、なんとなく未来の想像がつくじゃないですか。ロールモデルもいるし、5年後、10年後、20年後の姿が「見える」というか。初めてそのレールを踏み外すという選択を考えたとき、何も見えなくなってしまったわけです。ものすごく怖くなりましたね。

白木 その恐怖をどうやって乗り越えたんですか?

 そのときは、やればできる、と思ってがむしゃらに(笑)。でも、実際挑戦してみて思うのは、普通のことを一生懸命やれば意外とできてしまう、ということ。とにかく、世の中にはがむしゃらにやる人が圧倒的に少ないだけ。リスクという言葉は、やらない人が集まった社会が勝手につくったルールでしかないんです。

白木 なるほど、やらない人にとってはそう見えるというだけなんですね。では、当時はとりあえず目をつむって恐怖を乗り越え、スポーツビジネスの世界に飛び込まれた、と。

 最初はビジネスの世界に飛び込んだというより、あまりにもツテもアテもないので、ひたすら自分を営業していましたね。そうそう、営業と言えば、26歳のとき単身アメリカに渡りました。映画『マネーボール』のモデルにもなったメジャーリーグの球団、オークランド・アスレチックスのGMに会いに。

白木 スポーツビジネス経験ゼロ、しかも26歳の日本人がいきなりGMを狙うなんてすごいですよね。会って、どうされようとしていたんですか?

 もちろん、「仕事をください」と直談判しようと思って。でも、当然アポなしだから、受付の女性に門前払いされてしまったんです。「お約束がございませんから」と取り付く島もなくて。こんなとき、白木さんならどうされますか?

白木 うーん……。アポイントを入れていないわけですから、帰るかもしれません。

 いや、普通、帰りますよね。でも、僕は居座ったんです。受付の前で3時間以上。

白木 3時間以上も、ですか!