給料は、あなたを働かせ続けるために
「必要なコスト」で決まる

 では、その「労働力をつくるのに必要な生産コスト」とは何でしょうか? 人間が働くには、その仕事をする体力と知力(知識・経験)が必要です。労働者に体力と知力がなければ働いてもらうことができません。

 たとえば、マラソンを走り終えてエネルギーがゼロになってしまった人を働かせることはできません。労働者として働いてもらうためには、食事をして、睡眠(休息)をとって、再びエネルギーを満タンにしてもわらなければいけませんね。

 このときにかかるコスト(食費、睡眠のための住居費など)は、労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。同じように、業界未経験の人を会社に連れてきて、みなさんと同じように働いてもらおうとしても無理です。仕事に必要な知識や経験がないからです。これらの知識・経験を身につけてもらわなければいけません。

 このときにかかるコストや労力(学費・研修費、勉強時間など)も、労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。そして、これらの「労働力の生産コスト」を積み上げたものが、そのまま労働力の価値になり、その労働力の価値が基準となって、みなさんの給料が決まっていくのです。

 体力的にキツい仕事は、そうでない仕事に比べて、エネルギーをたくさん必要とします。そのため、エネルギー補給のためのコストが多く必要です。だから、そういう仕事はその分だけ給料が高くなります。

 非常に重要なポイントですので、改めて整理しますと、こういうことです。カップラーメンをつくるのには、

「めんや具材を仕入れる」
「スープを仕入れる」
「容器やフタを仕入れる」
「容器をデザインしてもらう」

 などが必要です。それと同じように、みなさんが「労働力」をつくるには(働けるようになるには)、食事をしなければいけません。食費がかかります。体力を回復させなければいけません。住居や生活設備が必要です。住宅費がかかります。服を着なければいけません。衣服代がかかります。ストレス発散のために気晴らしが必要です。娯楽費がかかります。仕事をするための知力が必要です。このときに知識習得費がかかります。

 これらの合計が労働力の価値になり、みなさんの給料を決めているのです。もらえるのは「社会平均的に」必要な経費給料が必要経費といっても、当然ながら「自分が必要だったらいくらでも出してくれる」というわけではありません。

 商品の価値は「社会平均的にみて必要な手間の量」で決まると説明しました。「世間一般で考えて、その商品をつくるには、これくらいの原材料や手間が必要だな」という量が、商品の価値になります。

 労働力の価値も同様です。労働力の価値として認められるのは、「世間一般で考えて平均的に必要な費用」だけです。個人的に「もっと食費や飲み代が必要!」「私はブランドのバッグがないと生きていかれないの!」と言っても通用しないということです。